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年始にあたって感じたこと

2015年2月

イラスト

 年始から早くもひと月半が経ってしまいましたので、年始のご挨拶としては遅いのですが旧年中は大変お世話になりました。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

 特養なごみ施設長金光です。お正月に初めて特養で過ごさせていただく中で、いろいろな気づきがありました。

 入居者のみなさんがクラブで作った正月飾りが各ユニット・フロアにおかれました。ボランティア仰々しくない雰囲気で「あー、お正月やな〜。」と感じることができました。

 お一人お一人あいさつに回った時の表情がいつも以上に穏やかでうれしそうな様子で、「こちらこそ、あけましておめでとうございます」とあいさつしてくださったり、最近よくご一緒させていただく方からは、「兄ちゃん、いつもありがとうな」と言ってくださったり、昨年末から食欲が少し落ちておられた方が一日の昼食のおせち御膳のような食事を普段あまり見られないような勢いで食べておられたり、普段はなかなか面会に来られることが難しいご家族の方が来られたり…。通常よりゆったりとした時間を過ごしている雰囲気がありました。

 午後からは法人内部署の小規模多機能型居宅介護事業所の「きずな」に数名であいさつに行かれ、懐かしい利用者の方や職員と楽しい時間を過ごされたようでした。昨年も以前きずなを利用されていた方を中心に何度か行き来させていただきましたが、ごく当たり前のように親しい方、懐かしい方に会いにいける気軽さは大事にしていかなあかんなあ〜と改めて感じました。

 年末から年始にかけてお家で過ごされた方が何人かおられました。年明けに体調がおもわしくなくなって予定より早めに戻って来られましたが、お正月に住み慣れた場所で過ごしていただくことは、ご本人にとってやはり大事なことなので、お家で過ごせる状況であるうちはお家で過ごしていただけたら、とご家族にもお話しさせていただきました。一緒に過ごしたい…、でも、本人の調子が悪くなったら対応できない…、介助する自分の負担の不安もある…。ご家族のご本人と一緒にいたい気持ちがありながら、様々な理由でそれが難しいことを重々受け止めて、ご本人はもちろんのこと、ご家族の不安に寄り添い、臨機応変に対応することの重要性を改めて感じました。

 先日、ある入居者の方が職員の対応を待っている時にお声をかけさせて頂き、お話を聞かせていただきました。最初はその職員が来るまで「別に来んでいい!」といった感じでしたが、お話を聞いていると外国の女の人の知り合いがいるなどの話をしてくださいました。

 (そういえば、先日オンブズマンの方が、その方が英語やカラオケがしたいとおっしゃっていたな…)と思い出し、カラオケの話をすると、テンションが上がって饒舌になり、口が渇いてきたようだったので、「しゃべり過ぎて口が渇いてきたみたいですし、何か飲み物を用意しましょうか?」と言うと急に目に涙を溜めて泣き出しそうな表情をされました。

 実際になぜそのような表情をされたのかはわかりませんが、他の入居者の方に比べ、ADLの自立度は高く、いろいろな方との会話を楽しみたいのに周りに一緒に話ができる入居者の方が少なく、職員は丁寧に対応してくれるものの、じっくり関わりながらゆっくり他愛もない話ができて笑い合える時間を十分にとれているか…というと、時間に追われている現状は否めない。そんな状況がわかっているから、入居者の方もどこか遠慮がちにさせてしまっている。

 その方は以前なごみのデイサービスも利用されていた方なので、デイサービスに一緒にあいさつに行くと、とてもいきいきとした表情でデイサービスの職員や利用者の方に話しかけておられました。結局そのままデイサービスに馴染まれて一緒に過ごしていただきました。

 ご本人が楽しい思い出のたくさん詰まった場所に行き来することは、少し前のことであっても、かなり前のことであっても、やはり大切なことだと、あらためて感じました。

 去る1月11日の日曜日に特養なごみの新年会がありました。ご家族の方も総勢20名ほどきていただき、北ユニットは北のスペースで、中ユニットは中のスペースで、南ユニットは1階のデイサービスのスペースで行い、鍋やデザートなどそれぞれのユニットで考え、ユニットごとの個性が出た雰囲気になっていました。

 私は休みで自分の子どもを連れて参加し、あいさつをさせていただいたのですが、職員と入居者の方はもちろんのこと、ご家族同士や自分の家族ではない他の入居者の方ともみなさん交流を持たれていて、とてもいい雰囲気でした。

 うちの子どももみなさんと同じテーブルで食べていたのですが、私が他の方の様子を見ている時に、小学4年生の長男がふざけてバランスを崩しかけた時に、同じテーブルにいた、ご自分から動かれることがない入居者の方がとっさに支えようと手を差し伸べようとしてくれたとのことでした。

 その方は以前駄菓子屋をされていて、とても子どもが好きな方だったので、ご自分の状況がどんな状態になっても、日々過ごされてきた想いはずっと大切に持っておられるのだろうと思うと切なくなりました。「ありがとうございました。」とお礼を伝えると、少し横を向いたしぐさが照れ隠しのように見えました。ちょっとしたハプニングでしたが、その方の今までにない面を見ることができてとても嬉しくなりました。

 何気ない日常から見えて来るものや聞こえてくるものにいかに目をやり、耳を傾けるかで見え方や感じ方が変わってくることを、今、入居者の方に教えていただいています。少しずつ、この素晴らしい先達の方々から学んでいくことを楽しんでいます。

 入居者のみなさま、ありがとうございます。(施設長 金光建二)

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