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2016年度事業計画

更新日:2016年4月21日

法人の課題

1.法人をめぐる状況

1)社会福祉法改正と社会福祉法人改革の推進

(1)政府は市場競争の力を重視する新自由主義路線に沿って社会福祉事業への民間参入を推進してきたが、経済界からは保育所や特養などの施設運営が社会福祉法人に限定されていることを「既得権」として批判するいわゆるイコールフッティング論が高まってきた。

(2)また、急激な高齢化に伴う社会保障費の増大が国や社会保険の財政を圧迫した結果、増税と社会保障制度の効率化の見直し論議が進められた。

(3)この時、ほんの一部の社会福祉法人が起こした不祥事(不適切な事業運営)がマスコミに取り上げられ、政府の規制改革論議でも社会福祉法人事業の継続に必要な資金を「過度の内部留保」として問題視する議論があおられた。

(4)社会福祉法人に対する批判の拡大に対し、まじめに社会福祉事業に取り組んできた多くの関係者の反論と努力の結果、本来の社会福祉法人を守るための社会福祉法改正案が国会で審議され、今年度中の成立を目指すところまできた。

2)障害者差別解消法の施行と社会福祉法人のイニシアティブ

(1)障がい者の人権と基本的自由を保障する「障害者権利条約」を批准すべく、国内法整備の仕上げとして制定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が、今年4月に施行される。

(2)この法律で障がいを理由とした差別の禁止と障害者への「合理的配慮」が行政や事業者に求められるようになりますが、これに違反した場合の罰則や相談窓口は新たに設置されていない。

(3)障がい者本人の意思表明を支援し、その人らしい地域生活を保障する「本人主体の支援」の輪を広げていく役割が社会福祉法人に求められている。

3)地域包括ケアと地域見守り支援システムを核に地域福祉の推進

(1)2015年の改正介護保険法には「地域包括ケアシステムの構築」が明記されました。2025年の団塊の世代が後期高齢者に突入する結果、激増する介護ニーズを医療介護の連携と地域住民の共助も含めてネットワークで対応しようというもの。

(2)しかし、この間の社会福祉の課題は「孤立化」「複雑化」というキーワードにあります。2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」では経済的困窮だけでなく、社会的孤立した人への支援が目的となっている。

(3)地域包括支援センターでの相談内容も高齢者、障がい者のタテ割り制度で対応できない事例も多く、地域の中での孤立化が深刻な事態を生んでいる。

(4)現在、2年目に入った「住吉区地域見守り支援システム」構築の取組は地域活動協議会を中心に着実に進んできていますが、今後のカギは支え合う地域住民の広がりと具体的な支援を専門職がしっかりと支えることができるかにかかっている。

2.法人の課題

1)社会福祉法改正に伴う取り組み

(1)現在、同法案は参議院で審議されていますが、年度内成立を前提とした準備を進めておく必要があります。法改正により求められる課題は、「法人機関組織(理事会・評議員会)改編への準備」「法人定款の変更」「法人事業等の情報開示の拡充」「地域公益事業の拡充戦略策定」の4点である。

(2)既に情報開示についてはかなりの部分で公表済みで、組織改編や定款変更等も2016年度評議員会において順次審議の上、年度内の改革実現に取り組む。

(3)とりわけ、「地域公益事業の拡充」については、既存の取組を戦略的に充実させ、広く社会に公表していく。

2)中期資金計画の見直し

(1)法人第5期の中間年に当たり、2015年度の決算となごみ改修事業等をふまえ、法人事業の安定性を高めることに重点を置いた第5期(2015〜2017年度)中期資金計画の見直しに取り組む。

(2)その上で、2018年3月に予定されている住吉総合福祉センターの買収、2018年度の泉北原山台新拠点開設をにらんだ第6期(2018〜2020年度)中期資金計画の策定に取り組みます。この計画では法人20周年をどのような形で迎えるのかという戦略的視点での検討を進めていく。

3)地域包括ケアシステムの推進

(1)住吉区における地域包括ケアシステムは「住吉区地域見守り支援システムの構築」を中核に進められている。北地域包括支援センターを中心に当該地域における支援ネットワークの形成と地域住民による支え合い活動の活性化に専門的支援で貢献していく。

(2)障がい者の意思表明を支え、本人らしい地域の暮らしを支援するため、ふうがを中心に障害者相談支援事業の強化に取り組む。

(3)住吉区政会議や地域福祉専門会議等、区における地域福祉推進議論への積極参加と提言に努める。

4)新規事業の展開と準備

(1)大領COCORO4月開所を受け、区内初の児童発達支援や重度障がい者支援に取り組み、事業の安定的運営に努める。

(2)住吉東駅前店舗を改装開店し、障害者自立訓練事業の充実を通じた駅前店舗街の活性化に努める。

(3)住之江じらふに併設して取り組んできた自立訓練事業つみきが手狭になったことを受け、住吉区南住吉に事業所を移転させ、活動の充実に努める。

(4)2017年度に本格導入される介護予防・日常生活総合支援事業にむけた準備に取り掛かり、訪問介護事業の新たな方向性を検討していく。

(5)2017年度に予定されていた泉北原山台新拠点開設が1年遅れることを受けて、2017年度じらふ卒業者の当座の活動の場の確保にむけた検討を行う。

5)法人事業運営体制の改編

(1)社会福祉法人改革と地域福祉の推進の流れを受けて、法人事業管理のあり方について抜本的な改革論議を進めます。とりわけ、高齢事業、障害事業のタテ割りを越えた事業本部体制への移行を検討していく。

(2)また事業管理体制の再編にむけ、長期的視点に立った人材登用の検討と 人材育成についての取組を強化していく。

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高齢福祉事業部の課題

 2015年度介護保険制度改革は、主に「地域包括ケアシステムの構築」と制度の持続性のための「減額報酬改定」であった。

 各部署ともに利用者拡大や稼働率を上げる努力をおこない一定の成果を上げることが出来た。通所介護では、口コミによるリハビリ目的の新たな利用者の確保。訪問介護は、要支援利用者に関しても積極的に受け入れ、特養は31床稼動を常に意識し、空床時のすみやかな対応を実施することにより、報酬減によるダメージを抑えられたと思われる。

 唯一、加算等で評価されれば報酬増となる小規模多機能型居宅介護事業では、積極的な新規利用者確保にむけて取り組んだ結果、であい・きずな共に利用者拡大ができ、予算を上回る増収を実現した。利用者増に向けては、単にひろく宣伝活動をしたわけではなく、この人、あの人と人にスポットをあて、本人にとっての先を見据えた提案による利用拡大であった。普段の地道な支援の質にたいして評価が得られたもので、医療・居宅介護事業所含む地域からの相談も増え、地域密着型事業としての信頼を得られるようになった結果ともいえる。

 2016年度高齢福祉事業部の課題は、「人材確保と育成」、「地域包括ケアシステムの構築」、「介護予防・日常生活支援総合事業にむけた取り組み」の3点である。

1)人材確保と育成

(1)高齢福祉事業部ではとりわけ特養や小規模多機能のような24時間型事業での人材確保が極めて困難となっている。昨年度も退職者の補充ができないまま派遣業者を使ってようやく最低限の体制を確保したにとどまった。

(2)まず、なにより離職者を減らすため、以下の3点の取組を進めていく。

  • 「腰痛予防」:介護技術の向上と機械の導入による職員負担の軽減を3年計画で取組む。
  • 「魅力ある職場づくり」:職員のモチベーションを高めるための取組を進める。自分たちの本分は人と関わることであるという意味がしっかりと根付いてきた。人の生活について支援のあり方を通して各部署が連携をもちながら取り組み、人を通した関わりを互いに深める機会をつくる。
  • 「業務の見直し」:部署を越えて効率的に職員体制を管理することと同時に、既存職員業務を洗い直し、専門職以外でも可能な業務を切り出して、高齢者や障害者の就労機会の創設につなげる。

(3)ハローワークも含め大学、専門学校、高校等への募集案内を強化するとともに、事業イベントの案内や現場見学会等を積極的に開催し、実際の現場を体験して選んでもらう機会を増やしていく。

2)地域包括ケアシステムの構築

(1)北地域包括支援センターは4月から「住吉隣保事業推進センター 寿」に移転する。地域の相談事業に関わる住吉隣保事業推進協会や医療相談に関わる医療法人ハートフリーとの連携による総合相談を推進することにより、地域の相談拠点を目指していく。

(2)住吉区地域見守り支援システムを地域包括ケアシステム構築の具体的な実践として捉え、東粉浜地区と住吉地区における医療介護のネットワークづくりに取り組む。

(3)地域住民による見守り支援の活動を充実するために、積極的に地域との連携を深め、専門職としての相談活動とともに、住民と一緒に本人支援を積み上げる中で、地域の福祉力の向上に貢献していく。

3)介護予防・日常生活支援総合事業に向けた取り組み

(1)2017年度までに導入される介護予防・日常生活支援総合事業は、介護保険サービスから要支援の人への予防通所介護と予防訪問介護を切り離して実施するもので、従来の予防事業者がする事業(A型)、住民ボランティアによる生活支援事業(B型)等が主な内容となっている。

(2)大阪市の実施は2017年度からとなっているが、住民ボランティアの活動が不十分な中、当面、既存事業所に事業委託をすることになるが、報酬単価は大きく下げられることが予測される。(また、2018年の介護保険改定に向けた論議では要介護1.2等の軽度要介護者の生活支援サービスを保険対象外にするという動きもある)

(3)法人として、高齢者の地域生活を支えるために総合事業に取り組むとともに、地域包括ケアを可能にするための住民による生活支援事業の組織化や継続して事業運営を可能にするための職員の効率的な運用について検討を始める。

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障がい福祉事業部の課題

 2015年度は、泉北で堺市との連携事業に参加した以外は、大きな変化もなく安定した1年であった。今年度は大領COCORO開設による新規事業が始まるが、しっかりと準備を進めてきたにもかかわらず新規利用者数が計画を達成できず、スタッフの人員配置については当面は横断的な人材の活用が必要である。住吉地域では、子どもから大人までの支援の流れができつつあるが、今後はグループホーム等の住まいの確保が課題であるといえる。     

 2016年4月から障害者差別解消法が施行されるため、今まで以上に本人支援の質が問われてくることが考えられる。「利用者の最善の利益とは」を常に心がけながら現場実践を組み立てていく姿勢が問われてくる。

 また、当事者の意思表明を支えるためにも相談支援事業所としての「ふうが」の役割も重要となってくる。地域の関係機関との連携やネットワーク形成の働きかけを今まで以上に進め、コーディネート機能の強化に勤めていきたい。

1)新たな実践拠点開設を障害者支援の質的向上の契機に

(1)新規事業の大領COCOROにおいては、重度障がい者中心の生活介護と区内初の未就学障がい児の児童発達支援(療育相談)の事業が予定されている。これまで法人事業で未着手の重度障がい者実践、未就学児支援の拠点として定着させ、当法人としてつながりのある支援、利用者ニーズに沿ったメニューの提供を深めていきたいと考える。

2)相談事業の人材育成と障がい者サービス全体への働きかけ

(1)相談支援部門において、この間、相談職への魅力と自分の力量に悩むスタッフが多く見られた。相談職のスキルとその獲得の過程を明確化し、スキルアップの道筋を作っていきたい。相談支援の強化が質の高い福祉サービスの提供につながると考える。

(2)昨年、当法人が中心となり住吉区・住之江区の障害支援事業所に声をかけ、障がい児支援の連絡会、就労支援の連絡会、グループホーム連絡会を立ち上げ、当法人が事務局機能を果たしている。今後は区全体の活動につなげていくことが必要であり、そのためにも自立支援協議会への連絡会としての参加を目指す。

(3)障害者差別解消法施行に伴い発生するであろう「不当な差別」「合理的配慮不履行」の実態を、障がい者本人と一緒に行政機関に届け、差別の解消に臨んでいく。

3)住まいのニーズ整理と計画化

(1)利用者家族の高齢化が進む中、「住まい」の問題は今後の最大の課題となってくる。利用者ニーズを段階的に整理し、グループホーム等の在り方を多角的に検討し計画を立てることが必要である。