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コラム:夢を抱いて

2017年5月19日

地域で住み続けるために

ライフサポート協会 務理事長 村田  進

 5月7日の朝日新聞に「サービス付き高齢者住宅 事故3,362件 要介護者多く」という見出しの記事がありました。

イラスト 全国の都道府県と政令指定都市、中核市の計114自治体から集めたサービス付き高齢者住宅(以下「サ高住」)の調査によると、2015年1月から1年半の間に、死亡や骨折など少なくとも3千件以上の事故が報告されていたということです。1日1回の安否確認と生活相談が義務付けされているものの、夜間は緊急通報システムがあれば職員不在でもOKという「サ高住」であるにもかかわらず、入居者の88%が要介護認定を受け、「介護施設化」が進んでいるという状態。制度を所管する国土交通省は、夜間職員数等の情報公表を義務付ける方針のようですが、厚生労働省の担当者は「事故ゼロは現実的ではなく、どこまで防げるのかを事業者はきちんと説明するべきだ」と話しているとのことです。

 情報提供さえすれば、選ぶのは高齢者自身の問題と、「事故は自己責任」とでもいうような国の感覚に呆れるとともに、高齢者の安心できる居住保障に対する責任放棄を指弾できないマスコミにも情けない思いです。

 私は、3年前のこのコラムで今日の状態を予測し課題を指摘していました。

 「サ高住」には、(1)医療・介護サービスの体制が弱い、(2)施設にこもって地域とのつながりが弱い等の課題があり、結果として寝かせきりや閉じ込めなどの虐待や事故につながりかねない脆弱な施設であると指摘しました。その上で、(1)外付けの医療・介護サービスの充実、(2)入居者の生活の質を高める援助計画の策定、(3)第三者の視点を導入できる運営推進会議の義務化が必要としました。また、むしろ「サ高住」を選択できない低所得者の住宅保障こそが課題であると提起しています。

 一方で、日本には大量の空き家住宅が存在し、問題になっています。総務省の発表によると、2013年10月時点で空き家は820万戸あり、総住宅に占める空き家の割合は13.5%(実に7.4戸に1戸)に上っています。

 活用されていない空き家住宅をどうするかが緊急課題となる中、2015年に政府は老朽化による倒壊や火災の原因になるとして「空家対策特別措置法」を施行し、全国の自治体で取組みが始まっています。

 また、国土交通省は「安心居住政策研究会」を立ち上げ、去年4月に「多様な世帯が安心して暮らせる住まいの確保に向けた当面の取組みについて」という報告を取りまとめています。高齢者、子育て世帯、障害者等を「住宅確保要配慮者」と捉え、民間賃貸住宅への円滑な入居に向けた「居住支援協議会」を自治体・不動産関係団体・居住支援団体等により結成すること。入居選別の要因とされる家賃滞納や住戸内死亡事故等への家主の不安を軽減するために「居住支援サービス」(家賃債務保証サービス、身元保証サービス、見守りサービス等)の充実に取り組むことなどを提言しています。ただし、「居住支援協議会」の結成はほとんどが都道府県段階で、政令指定都市でも20市中6市(もちろん大阪市は未結成)しか実現していません。

 ここで、改めて「地域で住み続けること」の意味を考えてみたいと思います。

 住居を確保すること、暮らし続けるのに必要な生活支援サービスを保障する取り組みは始まっています。しかし、地域で安心して暮らし続けるということは、一体何を意味するのでしょうか?もちろん、「安全な居住や環境」や「日常生活困難への支援」は不可欠ですが、それだけでは病院や施設での暮らしとあまり変わりはないように思います。

 一人の住民として心豊かに地域で暮らすために欠かせないのは、(1)「安全で心地よい住環境」や(2)「生活支援サービス」と同時に、(3)「地域でのつながり」と(4)「地域での自分の役割」ではないかと思います。

 地域の中につながれる友人や人間関係が必要です。人のお世話になるだけでなく、自分も人の役に立つ存在と感じられる瞬間が必要です。どんな状態になっても、生きていることに意味を感じることができる「人とのつながり」が何より大切です。

 住環境や生活支援の保障の取組みは、まだまだ課題が山積していますが、地域で支援に関わる場合、一人ひとりの「心豊かな地域生活」の実現という最終目標を心に留めて、地域の中にその人らしい「つながり」と「役割」をその人自身が得られるように努めねばなりません。

 すでに、地域課題に取り組む医療や介護の専門職やNPO、ボランティア、地域住民など、多くの人々の連携や協働が進んできていますが、肝心の自治体が依然としてタテ割り制度の中に閉じこもった仕事をしています。

 自治体の責任は、その町に住む一人ひとりの住民が、そこに暮らせてよかったと思える地域を作ることにあります。住民同士のつながりづくりを育み、地域の専門職、施設、企業、ボランティア等、あらゆる社会資源を住民の安心した暮らし実現へのパートナーになってもらうように働きかける自治体の役割が重要です。自治体こそが地域づくりのコーディネーターとしての役割を果たす時が来ています。

 自治体としての地域開発戦略が今こそ問われています。

 

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