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2017年度事業計画

更新日:2016年4月21日

1.法人をめぐる情勢と課題

1)社会福祉法改正と社会福祉法人改革

 2017年4月1日に施行される改正社会福祉法は、ここ数年来、国で議論されてきた社会福祉法人改革を制度化することを主たる狙いとしたものであり、その改革の柱は大きく以下の三点にある。

 第一には「経営組織のガバナンスの強化」で、法人事業の責任ある執行機関としての理事会と、それを日常的に監査する監事、理事会を牽制しつつ重要な議決機関である評議員会という経営組織の役割の明確化がその中身となっている。また、一定の規模以上の法人に「会計監査人」の導入を義務付けし、適正な事業運営にむけ外部専門家によるチェックを図ろうとしている。

 第二は、「事業運営の透明性の向上」で、これまでの決算・予算だけでなく、役員体制や報酬基準等、法人事業運営の内容について広く国民一般への公表を求めるものである。

 第三には、「財務規律の強化」で、社会福祉法人の純資産のうち福祉サービスに再投下可能な財産額(「社会福祉充実残額」)を明確化し、地域社会への公益的事業への積極的貢献を求めるものとなっている。

 法人としては、昨年11月の第三回評議員会で法改正に沿って定款変更を行い、本年4月からの新評議員会の選任の後、6月の第四回評議員会で新役員を選任する予定で、4年後に想定される「会計監査人」設置への準備が求められている。また、情報公表では、ホームページをリニューアルし、法人事業の情報をより見やすい形に改善していく予定となっている。更に、厳しい財務状況の中、法人としては求められる社会貢献事業に取り組んできているが、今後はより収益改善に力を入れることにより、適正な財務規律を確保することに全力を挙げる必要がある。

2)社会保障改革と地域包括ケア

 2025年、団塊の世代が後期高齢者に突入する時期をにらんで、社会保障ニーズの爆発的増加と財源確保の困難状況が大きな問題となっている。国や自治体の財政難のみならず、医療・介護等の保険財政の厳しさから、病院機能の再編や医療介護の連携、予防支援・軽度要介護者の保険外化等、効率的な制度への改革が議論にのぼっている。

 一方で、厚生労働省は「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(2015年9月)を打ち出し、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現」を掲げて、地域住民が参画し、制度のタテ割りを越えた福祉サービスの推進へ既存の制度を大きく変えようとしている。

 これらの動きを単に「公的責任の放棄だ」と批判するだけはなく、むしろ積極的に地域包括ケアシステム推進の契機と捉え、地域福祉に取り組むことが重要となっている。その際、地域住民の支え合いの活動を肩代わりしたり、組織しようという姿勢ではなく、個別のケース支援の輪の中に地域住民を巻き込み、本人主体を尊重する支援のあり方を一緒に考え、実践していくという福祉専門職の立場からの地域支援活動こそが求められている。

3)大阪市制度改革と住民自治

 大阪市では「都構想」か「総合区」かの論議が再燃している。その背景には、大阪市の政策を中之島本庁で全て決めるやり方が限界にきているという実態があるからである。既に、吉村市長は「総合区8区案」を公表し、8月頃までに各総合区に移行する権限や職員体制等の具体策をまとめ、来年2月の市議会に「総合区設置条例案」を提案するとしている。

 新たに設置される総合区では一般市並みの権限が移るとされ、地域の実情に合った柔軟な政策化により地域福祉の推進が容易になることが考えられる。また既存区を地域自治区とすることにより、住民参加と自治拡大の契機とすることも可能である。

 地域包括ケアを進める立場から、この「総合区」の動向にしっかりと注目していく必要がある。

2.法人事業

1) 事業全体について

総括

 2016年度は高齢・障がい両事業部とも予算達成に至らず、大幅な赤字となる見込である。原因としては、制度改正による利用対象者変更への対応の遅れ、競合事業所の増加開設に伴う利用者数の減少、入院・死亡による利用者減少への対応の遅れという理由に加え、新規事業所開設に伴っての人材の先行投資配置による人件費の増加、車両や物品などの投資増、修繕費も同時に重なったことがあいまっての「収入減」「経費増」が同時になったことが大きい。特に「質の向上」を理由にした職員増が、利用者確保と伴わなかったことが赤字につながったと言える。

方針

 これまでの積極的な研修の実施や、評価の取組みを行なってきたこともあり、実際に支援の質については、着実に向上しつつあると評価できるため、次年度は稼働率の向上を第一の目標とし、事業の安定化に努める1年としたい。

 それ以外にも、経費の見直しを行い、無駄の削減、事業の相互乗り入れや福祉資源の有効活用を行なうことで、法人全体の人材についても有効活用を図り、人材難の軽減・解消と、人件費率の低減化をすすめていく。

 2017年度は、事業収支の黒字化が至上命題であり、事業の安定なくして質の向上は両立しないということを押さえつつ、質の維持と効率化・安定化をともに進めていくことが求められる。

課題

(1)人材育成による人材の質の向上と効率的な人材配置の再構築

  • 適材適所の配置を再考し、人件費率の適正化を第一の課題とする

(2)事業の乗り入れによる効率化及び福祉事業の有効活用による質の向上

  • 人材及び他の事業の有効活用
  • 事業ごとのスタッフ・利用者の交流の拡大

(3)稼働率の向上による収益の安定化

(4)ニーズ調査による今後の事業展開の予測

  • 高齢・障がいの今後の事業のあり方についてニーズ調査を行ないながら計画化

2)高齢事業部

総括

 2016年度は全体的に入院・逝去が相次ぎ、制度変更のあおりも受けるなど、利用者減に対する準備が不足していたため、対応が後手になって収入減を食い止めることができなかった。また介護職員希望者の減少に対する戦略不足もあって、欠員がなかなか埋まらない~そのために日常業務に追われる~戦略がとれないという悪循環に陥ってしまった。

方針

 大阪市でも2017年度からは市町村地域支援事業としての、介護予防・日常生活支援総合事業がはじまる。従来の介護保険制度とは切り離されるため、事業報酬は多くは見込めず、今後の高齢事業を進める上での岐路に立たされている。

 まずは、介護職員確保による業務の安定を図り、地域の状況を検討した上で、今後の方向性を議論していくことが求められる。収益改善のためには、委託内容も見直して合理化をすすめるのみならず、現存の事業も再検討することも必要と考える。特養・デイ・ヘルパー・小規模・グループホームすべての機能についてゼロベースで見直すことも含めて内部検討を始める時期にある。

 また、法人の事業であることを各部門でも意識し、つなげて考えることで利用者減に歯止めをかけ収益回復につとめることが最大の課題である。

課題

(1)人材育成による効率的な配置検討

(2)事業の乗り入れ

(3)稼働率の向上

  • ケアマネや包括等から積極的に情報を取り入れ、ニーズ調査、利用者リスト等の作成と更新の習慣化

(4)ニーズ調査による今後の事業展開の予測

  • 介護予防・日常生活支援総合事業の検討と介護保険事業への供給の仕組みの検討

3)障がい事業部

総括

 2016年度は新規事業に伴い、成人の通所部門は全体的に稼働率が伸びず低迷した。ある程度の減少は予定していたが、想定を少し上回ってしまった。それに加え、予め人員を少し多めに配置していたことも人件費率増につながった。その他も初期費用の経費や修繕関係費用も予算を上回る見込であり、これらが合わさっての収益減が想定されている。

方針

 2017年度は、今年度中に利用者の確保に努めたこともあり、住吉地域で約20名の利用者増が見込め、スタッフ数も1~2名増で抑える為、収入増と人件費率の抑制が見込まれる。

 障がい児の放課後デイサービスは、事業所数の増加により以前のような稼働率は見込めなくなった。事業所を一つ閉鎖し、稼働率の向上を目標とする。児童発達支援のニーズはあるものの、子どもも小さいため安定した利用がされていない。継続していく中で安定的利用を促していく必要がある。また専門療育の精査と常勤スタッフの質の向上により、専門スタッフの精査も必要と感じている。

 ふうが系統はつみきサテライトの利用者拡大が課題である。雑貨店『らふら』開店により、利用者層の拡大を図りたい。また、社会福祉法人野菊の会より地域活動支援センターA型を譲り受けることにより、重複利用者の支援の統一、スタッフ数の増員を最小限で抑えることで人件費の削減に努めたい。

 ヘルパー、グループホームに関してはニーズ整理を行い、計画的な利用を促していくことにより収益増を実現したい。

 泉北は、放課後等デイサービスは2017年度卒業生が多数(10名)いる為、計画的な利用者獲得が至上命題である。成人事業に関しいては、来年度の卒業生が不安なく通所事業を利用できるよう、準備を進めていきたい。

課題

(1)人材育成による効率的な人材配置の再構築

  • スタッフの力量を上げることにより、退職・休職後の補充を極力パートで補えるようにしていく。
  • 利用者のニーズと職場環境の整理を行い、業務の効率化を図る

(2)事業の乗り入れによる事業の効率化及び福祉事業の有効活用による事業の質の向上

  • つみきサテライトなどの高齢事業の支援メニューを考え、授産事業として高齢者の余暇支援のお手伝いをすることで、高齢スタッフの人手不足も補う。

(3)稼働率の向上

  • 泉北事業の計画的利用者獲得(定期的な説明会を実施)
  • 『らふら』開店によるつみきサテライトの利用者増

(4)ニーズ調査による今後の事業展開の予測

  • グループホームの定期的なニーズ調査による事業の展開

社会福祉法人野菊の会 地域活動支援センター事業
『コロたま倶楽部』の吸収合併について

これまでの経過

 2017年3月に入り、社会福祉法人野菊の会から住吉区山之内で活動中の『コロたま倶楽部』(地域活動支援センター)の受け皿になって欲しいとの打診がありました。

 理由として『コロたま倶楽部』の職員退職が相次ぎ、事業運営に行き詰まったとのことであった。

 社会福祉法人野菊の会では、地域活動支援センターを2ヶ所運営しているが、事業所間の交流はあまり行われておらず、各々が独自の運営をしており、この事態に対応できないということから、当法人への依頼となった。

 当法人としては、ふうが利用者を通じて状況は聴いていたこともあり、利用者も複数のセンターを重複利用されている方も多く、利用者の居場所がなくなることを見過ごすわけにもいかず、『コロたま倶楽部』の引継ぎを進めていきたいと考える。

 職員については、ふうが地域活動支援センター・計画相談・つみきサテライトの職員間調整で対応する。