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地域住民が主体の「見守り支援システム」を!

2015年11月2日

ライフサポート協会 常務理事 村田 進

府・市ダブル選挙は公民協働中心の大阪を示す絶好の機会

イラスト 任期満了に伴う大阪府知事・大阪市長のダブル選挙が11月22日に予定されています。

 既に有力な候補者が出そろい、実質上の選挙戦のスタートとともに、それぞれの選挙公約が示されています。今年5月の住民投票で否決された「大阪都構想」を公約に掲げることは論外ですが、ともすれば、「二重行政の解消」や「成長戦略」にばかり議論が偏り、大阪を本当に活性化させる改革の主体と方向性が明らかでないように思います。 特に、各陣営の経済活性化の方針が「副首都化」や「リニア開通」「首都機能の誘致」等、東京一極集中との関係での政策に止まっているのが残念です。

 地方再生の取り組みが全国の自治体や住民の努力で活発に展開されていますが、多くの成功事例の特徴は、「地元の魅力」を「地域の住民自身」によって再発見し、そこに活路を見いだしている点です。大阪の魅力の再発見に大阪市民自身が取り組み、行政と一緒に公民協働のうねりを作り出していけるかが問われているように思います。

 「ニア・イズ・ベター」や「人に優しい街」、「総合区」のように地域住民の声から出発するこれからの大阪にむけた提案を全面に出した選挙戦を期待しています。

厚生労働省の福祉ビジョンに対応した改革に大阪市は着手できるのか?

 9月17日、厚生労働省は「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現−新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン−」を発表しました。このビジョンを取りまとめたのは社会・援護局長、老健局長、雇用均等・児童家庭局長、障害保健福祉部長等の社会福祉に関わる全部局のトップが参画したプロジェクトチームでした。

 今日の社会福祉政策では、「家族・地域社会の変化に伴い複雑化する支援ニーズへの対応」と「人口減少社会における福祉人材の確保と質の高いサービスを効率的に提供する必要性の高まり」という課題が浮びあがっていました。この間、厚生労働省は、高齢者施策での「地域包括ケアシステム」をはじめ、「生活困窮者自立支援制度」など各福祉支援施策において、支援の包括化や地域連携、ネットワークづくりの推進を課題としてきました。

 このビジョンは、個々の制度の枠を超えた多様なニーズをすくい取る「全世代・全対象型地域包括支援体制」の構築を打ち出しています。

 すべての人が世代や背景を問わず、安心して暮らし続けられるまちづくりが不可欠で、高齢者施策の地域包括ケアシステムを全世代・全対象に発展・拡大させ、各制度とも連携して、新しい地域包括支援体制の確立を目指すとしています。そして、その為の課題として、「分野を問わない包括的な相談支援の実施」、「地域の実情に見合った総合的なサービス提供体制の確立」をかかげるとともに、「支援に関わる当事者のみならず住民も参画するまちづくりへの取り組み」につなげることをめざしています。そして、これらの制度の枠を超えた体制を構築する上で、各制度の基準等が壁にならないように規制緩和等の検討に入るとしています。

 厚労省は、来年度からのモデル事業を各自治体に照会し、既に手を上げた自治体も出ているようですが、果たして大阪市はこの動きに付いていけているのでしょうか?

 残念ながら反応は鈍いようです…。

住吉区地域見守り支援システムの成否は「住民主体の運営組織」にかかっている

 住吉区では、国の災害対策基本法改正(2013年6月)に伴う要支援者対策に基づいて、「地域見守り支援システム」の構築に取り組んでいます。これは、災害時に支援が必要と思われる高齢者、障がい者、難病患者等に区役所から要支援者リストへの登録アンケートを送付し、必要とされた方のリストを当該の地域活動協議会に委託して、日常的な見守り・相談体制を創り上げようというものです。2014年から取り組みが始まり、今年の10月で全12地域でのリストづくりが開始されています。同時に、各地域に「地域見守り支援事務所」を開設し、支援相談員などの地域住民とコミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)等の専門職が一緒になって要支援者の相談支援に当たろうとしています。また、区役所内に「見守り相談室」が開設され、CSWの支援や区役所関係局や区内サービス機関との連携が図られる予定です。

 まさに、厚生労働省のビジョンが示す、地域住民と一緒に安心して住み続けられる町をめざした、包括的な相談支援の仕組みにつながるものです。

 取り組み開始から2年目の今年、全ての地域でリストづくりと事務所の開設は達成しそうですが、問題はこれからで、日常的な見守り相談支援体制に向けたいくつかの課題が明らかになってきています。それは、(1)支援者確保の問題、(2)専門家によるバックアップの問題、(3)多様なサービス等へのつなぎの問題、(4)日常的な要支援者の交流・居場所の確保の問題等です。12地域はそれぞれの地域事情があり一様に取り組みが進むわけがありませんが、地域の実情に合わせた形で少しずつ課題を乗り越えていくことが必要です。

 とりわけ、このシステムが成功するかどうかのカギは、これまでの「地域活動」のように区役所が地域に指示を出すやり方ではなく、地域見守り活動の運営を地域住民が中心になって取り組めるかどうかにかかっています。地域活動協議会が中心となって、支援に関わる関係機関等(区役所・福祉施設や事業所・商店やボランティア等)と対等な関係で日常的な見守り支援活動の運営について話し合う場をつくることが大切です。

 その際、専門職である地域包括支援センターやCSWは、この運営の場づくりを積極的に支援すると同時に、個別の支援の取り組みを通じて地域住民の支え合う活動をしっかりとサポートする中で、地域の福祉力向上に貢献する必要があることはいうまでもありません。