pagetop

文字サイズ:小 中 大

コラム「夢を抱いて」

20年を迎えたライフサポート協会

2019年7月29日

ライフサポート協会 理事長 村田 進

たくさんのつながりのおかげで

 社会福祉法人ライフサポート協会は7月で設立20年の節目を迎えました。

 同和対策事業を活用した地区の福祉実践を、介護保険制度を活用してより広い地域社会の福祉課題に取り組もうと設立されたライフサポート協会。わずか6人の職員による在宅高齢福祉サービスの取り組みが、今や非常勤含め400人を超える職員による高齢者・障がい者の総合的な地域生活支援活動へと発展しています。法人の今日があるのも、本人、家族はもとより、地域の福祉にかかわる役員・住民のみなさん、医療・福祉関係者、行政や地域事業者のみなさんとのつながりのおかげと感謝しています。

 北地域包括支援センターを中心に、地域活動協議会等との連携による住吉区地域見守り支援活動、区内医療機関や居宅介護支援事業所との連携ネットワークが広がっています。高齢者・障がい者地域支援の複合施設「であい」は、町会、老人会、小中学校等との連携の場として活用され、名実ともに「地域の家」になりつつあります。障がい者就労継続支援B型の「べらしお」や「るぴなす」、子育てママさんの憩いの場をめざす「らふら」などでは、民間企業とのコラボ事業によって従来の枠を超えた多様で柔軟な福祉事業の展開につながり、マスコミなどでも取り上げられています。

合言葉は「本人主体」

 法人が地域のつながりと事業を拡大してきた根底に、「すべての人が尊敬される社会の実現」というライフサポート協会の法人理念があります。どんな人でもその人らしく暮らせる権利があり、そのニーズを本人と一緒に実現することが社会福祉の役割と考え、本人の課題に一つ一つ応えていく中で、事業と人のつながりが広がってきました。

 住み慣れた地域で暮らし続けられるための在宅支援を重視してきましたが、独居生活を維持できなくなった高齢者の社会的入院・入所に対応すべく、小規模特養や認知症対応型グループホームを開設しました。その後、地域密着サービスが創設されると、真っ先に小規模多機能型居宅介護に取り組みました。

 修学前の障がい児支援の「児童発達支援」⇒小・中・高の障がい児支援の「放課後デイ」⇒社会に出る前の力を整える「自立訓練」や「就労継続支援」など、本人の成長に伴う課題に少しずつ対応してきました。障がい者の「生活介護」事業も、障害特性に対応したサービスを進めるため、重度者を中心とした「大領COCORO」や、創作を中心とした「であい生活介護」など事業所を広げています。

「本人の意思を中心に」という支援への思いを共有すべく、他法人との協同研修会や実践報告会、区内小中学校と連携した「福祉教育勉強会」、住吉・住之江区の障がい児支援事業所を集めた共同研修会「すみすみ」、福祉従事者を対象にしたトークライブ形式の「大人塾」など、多様な学びの場を企画してきました。

「外れ値」としての試練と誇り

 一定規模の入所施設等をもたず、小規模の入所施設と小定員の通所事業所が多く、相談支援等の公益事業をたくさん持っているライフサポート協会は、事業高こそ12億円を超えているものの、収益性は極めて低く、「安定経営」にほど遠い状態です。社会福祉事業経営の指標からすれば明らかに「外れ値」といわれる不安定経営が続いており、ここ数年で人件費率の抑制をはじめとした経営効率の改善を実現すべく、日々議論を重ねているところです。

 一方で、法人理念を追求する職員としての「実践行動指針」と「倫理綱領」の策定や、職員研修、事例検討会、公開講座等を全職員が参加して実施するなど、職員資質の向上に取り組んできました。また、ライフスタイルに応じて「働き続けられる職場」をめざした「短時間正社員」制度も整備し、産後復帰を中心にこれまでのべ14名(19回)の利用がありました。法人が受け入れているソーシャルワーク等の実習生も、昨年は22校104人が受講され、日々のアルバイトやボランティア活動を通じて法人職員に応募してくる学生も多数に上っています。その結果、福祉事業所ではめずらしく職員完全充足状態となっています。

「給料は大したことないけど、働き甲斐は腐るほどある法人」が20年目を迎えたライフサポート協会の姿です。

 法人20周年記念誌に掲載された原田常務理事の「ライフサポート協会の将来」には、以下のような決意が示されています。

『押し寄せる荒波の中、私たちが大事にしてきたことは「生活ニーズ」です。(略)他者がしているから事業をするのではなく、収益が少ないから事業を廃止するのでもなく、生活ニーズを忘れることなく、利用者と一緒に、地域と一緒に、スタッフと一緒に、これからの社会福祉法人ライフサポート協会を育てていきたいと思います。(略)そして、福祉事業を楽しめる法人であり続けたいと思っています。』

 着実に育ってきている職員集団。そろそろ次世代へのバトンタッチを考える時にきているように思うこの頃です。