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コラム「夢を抱いて」

地域に協働の拠点を

2019年9月26日

ライフサポート協会 理事長 村田 進

 いま、日本の社会保障制度は、二つの大きな課題をめざした改革に直面しています。

 一つは、これまでの高齢者中心の社会保障制度から、子どもや若者世代をはじめとした「全世代型社会保障」を実現しようというもの。そしてもう一つは、従来の制度縦割りでの専門職中心の福祉から、地域社会を基盤に住民をはじめとした多様な人々の協働により互いを支え合う「地域共生社会」をめざそうというものです。

「全世代型社会保障」のための財源確保

 9月20日、政府は安部首相を議長に「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げ、官邸主導の社会保障改革論議をスタートさせました。膨らみ続ける社会保障費を前に、持続可能な制度への改革に取り組むとしています。しかし、安部首相は7月に「これ以上消費増税を引き上げることはまったく考えていない」と公言しており、最初から限られた財源の中での見直しにとどまることが予想されています。

 初会合で掲げられた検討課題は、年金収入を増やすための高齢者の就労促進や厚生年金へのパート等の適用拡大など、これまで議論されてきているものが多く、むしろ重点は、介護サービス利用者負担や後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げなどの国民負担増や給付費のカットを中心としたものになりそうです。

 もともと消費税は、1997年の5%増税時に「福祉目的税」として「年金・医療・介護の高齢者3経費」に活用するとされており、2014年の8%への引き上げ時には「社会保障目的税」とされ、「子ども・子育て支援」にも活用されることになりました。当時の村木厚子厚生労働事務次官は、消費増税額から7千億円の財源を引っ張り出して、「子ども・子育て支援新制度」を創設し、基礎自治体が責任を持って地域特性に応じたサービスを提供できるような仕組みに活用しました。今回の10%への引き上げについても、子ども・若者への社会保障費の拡充を掲げて、幼児教育や高等教育の無償化の財源として活用するとしています。

社会保障関係費への消費税配分額の割合

 しかし、財務省が公表しているデーターを見ても、年金・医療・介護等の社会保障関係費(2014年から子ども支援含む)に対する消費税から配分された財源額の割合は、高齢者ニーズの拡大と共に次第に減少し、2000年の76.9%から2018年には46.8%にまで落ち込んでおり、消費税が10%になる今年でも50.7%です。

 高齢者人口がピークを迎える2040年に向け、ますます社会保障費が増大し、さらに子ども・若者・生活困窮者等の格差解消という全世代型社会保障を推進していくためには、まずその費用をどうするのかが最優先課題であることは間違いありません。残念ながら、少々の制度合理化や費用負担増ではとても賄いきれないのは明らかで、1%で2.8兆円という強力な財源を確保できる消費増税で社会保障財源を確保するという議論から政治家が逃げ続けることは許されません。

「地域共生社会」推進のプラットホームを制度に

 先日開かれた第38回全国社会福祉法人経営者大会では、「地域共生社会の実現に向けての社会福祉法人の役割」についてたくさんの提言が出されていました。その多くは、戦前の社会事業活動にルーツを持つ社会福祉法人こそ主導的役割を果たすべきだというもので、株式会社等のケア・ワークだけに対して社会福祉法人ではソーシャルワークの上にケア・ワークが実践されているとしています。制度化されていないソーシャルワークに取り組むことが「非課税の根拠」であり、民間の社会福祉事業者との「イコールフッティング論への反論」になると主張でした。

 確かに社会福祉法人が積極的にリーダー役を担おうという意気込みは尊いもので、全国の法人がめざすべきところですが、実際、その任に耐えられる法人がどれほどあるのかと考えますとなかなか厳しいものがある様に思います。全国経営者協議会の組織率は未だ50%に届かず、加盟している法人でもこの議論についていけてない所が多いように感じます。

 そもそも、社会福祉の支援は課題を抱えた人に単に制度を使った支援サービスするだけではだめで、地域の一員として暮らし続けられるように支援することも含めて福祉事業者に求められています。社会福祉法人だけでなく、株式会社やNPO法人の中にも制度の隙間を埋めようと果敢に奮闘している法人がたくさんあります。

 制度に保障されていない「ソーシャルワーク」に取り組むことを社会福祉法人の専売特許のごとく強調するのではなく、「地域共生社会」を実現するためには地域に「ソーシャルワークの機能」が必要で、その制度的保障を提言すべきではないでしょうか。

 「地域の生活困難者の早期発見をはじめとした住民の支え合い活動を支援する機能」「専門職の連携を深め包括的な支援を地域の中で推進する機能」等の「ソーシャルワーク機能」が身近な地域に求められており、それを全国統一的にはたせる組織で考えるのは不可能であり、非効率です。しかも、全世代型福祉となると高齢者から子育て、生活困窮者までの幅広い支援を担える法人などめったにありません。それぞれの課題でリーダーシップを取れる組織が連携して協働できる「プラットホーム」を、地域のニーズに合った形でしっかり保障する制度が必要です。

 すでに高齢者支援で実践を重ねている地域包括支援センターを有効に活用して、そこに障害者相談支援や地域医療支援、子育て支援、生活困窮者支援等に関わる専門職をNPOも含めた関係法人から出向させる財政的仕組みを作ることが必要です。

 このプラットホームの活動を通じて地域での専門職協働が深まり、住民との協働を通じてソーシャルワーカーが育成され、結果として関係機関の活動水準は格段に上がることは間違いありません。

 もちろん、社会福祉法人がこの取組に果敢に取り組まねばならいことは言うまでもありません。