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コラム「夢を抱いて」

福祉のお仕事

2021年3月18日

ライフサポート協会 理事長 村田 進

 新型コロナウィルスの蔓延で、にわかに注目を浴びている「エッセンシャルワーカー」。市民の日常生活に欠かすことのできない仕事として、医療、介護、輸送、スーパー等で働く人々をさすといわれています。1年以上に及ぶコロナ禍の下で、重症化しやすい高齢者や障がい者を支援する福祉の現場は何とか踏ん張ってきました。コロナ感染を疑われ、PCR検査結果の出ていない高齢者が、施設や自宅でいつもと変わらぬ生活を送れるようにと、防護服を着て支援する福祉職員の活動には頭が下がります。

 今年も4月に、新しい働く仲間を法人に迎えることになっています。改めて福祉の仕事について考えてみたいと思います。

 病気や障害で日常生活に困難を抱えた人の暮らしを支えるのが福祉の仕事といわれます。

 では、その「暮らしを支える」ということはどういうことでしょうか?

地域の中で元気に暮らすAさん

 5年前に夫を亡くし、現在75歳のAさん。離れて暮らす子ども達の家族とは定期的に電話のやり取りはあるものの、普段は元気に地域での独り暮らしを楽しんでいます。

 週2回は駅前のパン屋さんでレジのアルバイト。月1回開かれる老人会の「ふれあい喫茶」ではボランティアとして働いています。公民館で開かれている「絵手紙教室」や町会の「認知症予防教室」にも参加して熱心に学んでいます。趣味も多彩で、友人と大好きな「宝塚歌劇」に行ったり、「お茶会」を開いたりしています。健康のために毎朝1時間の公園散歩と、週2回は市民プールで歩いています。毎日、商店街の行きつけの店でおしゃべりを楽しみながら買い物をしています。地域での様々な活動でたくさんの知人友人との交流を深めながら毎日を送っているAさん。もちろん身の回りのことはすべて自分でこなしています。

病気で家に引きこもるAさん

 ある日、Aさんは脳梗塞を発症し、救急車で病院に運ばれてしまいました。幸い九死に一生を得て、一命を取り留めることが出来ました。病院でのリハビリも順調に進み、半年後には自宅に帰れるようになったAさんですが、半身麻痺が残っているため、自宅内の移動はできても日常生活はヘルパーさんの介護がなくては立ち行かない状態です。働くことはもちろん、習い事や趣味・運動など家の外に出ることもなくなりました。友人や地域の人たちとのつながりも切れて、自宅に引きこもるようになったAさん。「もう二度と以前のような暮らしに戻れない」と、落ち込むAさんにどんな支援が必要でしょうか?

 ケアマネジャー、ホームヘルパー、デイサービススタッフ等、Aさんに関わる福祉職員は、まず自分たちの食事・排泄・入浴等の介護サービスでAさんの日常生活の基盤を支えます。

 しかし、同時に大切なことは、Aさんが元気な時に築いてこられた地域での関係と役割をどうつなぎ直すか、障害を抱えたAさん自身の力を活かしながら新たな地域での人間関係と役割を再生できるかを追求することです。

Aさんの新しい地域でのつながりと役割

 まずは、Aさん自身が障害を持つ「今」を受け止め、地域とのつながりに一歩踏み出す気力を持ってもらえることが大切です。福祉職員のしっかりとした支えが、Aさんの安心感と勇気につながります。

 その上で、例えばデイサービスではリハビリに取り組んでいただくだけでなく、Aさんが講師になる「お茶会」を開催することも出来ます。ヘルパーはAさんを車いすに乗せて、公園を散歩して商店街に買い物に行く中で、出会える地域の人々とAさんの会話を楽しむ機会を作ることが出来ます。ケアマネジャーはAさんの友人や隣近所の住民さんに働きかけ、Aさんの社会参加の機会づくりに協力を求めることが出来ます。毎朝の子ども見守り活動に取り組む老人会の方々に、登校していく子ども達に玄関先で声掛けするAさんも一緒に気にかけてもらうようお願いすることもできます。町会の家族介護教室で、Aさんに病気と要介護状態になってからの体験を話してもらう機会を作ることができます。

 障害を持っても、その状態を踏まえた新しい地域でのつながりと役割を持とうとしているAさんの姿を見て、関わる住民の多くが「いつか自分が病気になっても、支えてくれる人や地域がいる」と未来への安心を感じることにつながります。

 今日の社会福祉の目標である「地域共生社会の実現」は、このような具体的な地域のつながりづくりから生まれるものだと思います。

 私たち福祉職員は、その最先端の役割を果たせる素晴らしい職業ではないでしょうか。