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コラム「夢を抱いて」

地域の未来

2023年9月

ライフサポート協会 理事長 村田 進

「地域活動協議会の活性化に協力してほしい」と協議会の会長から依頼があり、5月から少しお手伝いさせてもらっています。福祉を進めていくうえでは、地域住民による「支えあうまちづくり」が重要な課題となっており、町会を中心に様々な地域課題に住民自身が取り組む「地域福祉」の推進が欠かせません。

 地域では町会加入率の低下や役員の高齢化で活動が停滞している中、大阪市の主導で町会エリアに「地域活動協議会」の設立が進められてきました。しかし、まだまだ住民には知られておらず、町会の役員の中には、新しい役割を行政に押し付けられたとの反発もあり、課題が山積しています。改めて地域の住民活動組織について考えてみました。

町内会の設立

 戦前の町内会は、戦時体制に対応するために1940(昭和15)年に内務省の訓令(内務省訓令第 17 号「部落会町内会等整備要領」)によって、従来の区などの自治組織に代って一元化され整備されました。
 更に1942(昭和17)年、政府の「国民組織に関する方針」の決定によって町内会は大政翼賛会の指導下に入り、戦時体制において労働力の動員や物資の供出、住民同士の相互監視等の役割を果たしていきました。

 終戦後1947(昭和22)年、連合国軍総司令部(GHQ)から町内会が戦争遂行体制の一部だったとして、町内会の解散命令(ポツダム政令)が出されました。しかし、戦後の治安や衛生、物資配給のうえで地縁組織の存在は欠かすことができないものであったため、町内会は、振興会、防犯組合といった名称・形態に変更されながら事実上維持されていきました。
 1947(昭和22)年、災害救助法の制定に伴い、日本赤十字社は災害救助などの事業を行う「赤十字奉仕団」の結成を全国に呼びかけます。大阪市では各区で町内会単位に赤十字奉仕団が結成され、1949(昭和24)年にはその連合体として「大阪市赤十字奉仕団」ができ、災害救助や戦後復興などに役割を果たしていきました。

 1952(昭和27)年のサンフランシスコ講和条約の発効に伴いポツダム政令が廃止されると、自治会・町内会等も再び全国に、しかも急速に組織されるようになります。大阪市でも都市化が進む中、地域における新たなコミュニティづくりが求められるようになり、新たなコミュニティづくりを担う組織として、大阪市赤十字奉仕団と構成員・役員を同じくする一体の組織として、1975(昭和50)年6月に「大阪市地域振興会」が結成されました。並行して地域の町内会は振興町会と呼ばれるようになります。

都市化・核家族化と地域住民活動の多様化

 高度経済成長の下で、大阪市への人口集中(都市化)と夫婦・子どもを中心とした世帯の核家族化が進行していきます。その結果、地域での住民のつながりが希薄化し、地域活動、とりわけ町会活動への参加が停滞し、町会への加入率の減少、活動人材の不足と役員の高齢化が進んでいきました。

 一方、1995(平成7)年の阪神淡路大震災を契機としたボランティア活動の拡大や、1998(平成10)年のNPO法(特定非営利活動促進法)制定に伴うNPO法人の広がりによって、地域住民による新たな自主的な活動が展開されるようになりました。

地域活動協議会の設立

 全国の自治体では、災害時の地域住民による助け合いの仕組みがますます重要となる一方で、社会的に孤立した住民の孤独死や自殺、虐待などの深刻な事態が発覚する新しい社会問題が噴出していました。
 大阪市では、平松市長が2011(平成23)年に「なにわルネッサンス2011―新しい大阪市をつくる市政改革基本方針」で、地域活動の新たな担い手としての「地域活動協議会」の設立を打ち出しました。それは、従来の町内会だけでなく、NPOや企業、福祉施設・病院、学校園・PTA、社会教育団体等の地域の幅広い団体で構成される「地域活動協議会」によって住民活動の活性化を図ろうという狙いがありました。

 その後、橋下市長によって「地域活動協議会」は地域の唯一の公的住民組織と位置付けられ、民主的で開かれた運営を条件に行政補助金の交付団体(準行政的組織)とされ、現在に至っています。

町内会と地域活動協議会の役割の整理

1)町内会の役割

 町内会は、地域住民の親睦・交流を促進する会員組織で、日本赤十字事業及び大阪市民共済への協力、大阪市政・区政への協力という活動を掲げ、市民の力によるまちづくりを進めるとしています。地域の住民のつながりづくりにおいて町内会は欠かせない存在で、地域活動協議会の中核的組織として主導的な役割を果たす組織でもあります。

2)地域活動協議会の役割

 身近な地域で様々な住民の課題に対応し、住民自身の活動を通じて安心して暮らし続けられるまちづくりに取り組む「住民総意形成機能」の役割を持つ公的組織といえます。地域住民とは実際にその地域に居住している住民だけでなく、地域で活動している各種団体、企業・事業者・公的組織も含む、地域に関わるあらゆる団体・個人をさします。その運営は多様な課題に対応できる構成団体・役員体制が必要で、広くその活動情報を発信しながら住民が地域活動に参画するのを促すことが重要です。
 従来の地域活動の中心であった町内会が、地域活動協議会の運営に主導的に関わり、NPOや様々な地域で活動している人々と一緒に取り組んでいく中で、地域活動の新たな人材の発掘と町内会加入率の向上が実現していくのだと思います。

地域見守り支援システムの活動を通じて

 町内会も地域活動協議会も、単なる行政の下請け組織ではありません。あくまでも地域のことは地域住民自身が決めていく自治的組織であるべきですが、これまでの経過や実態が住民の主体的な活動になかなかつながっていないのが現状です。

 そこで、大切なことは住民自身の具体的な活動の経験を通じてつながりの輪を広げていくことではないかと思います。
 2014(平成26)年から住吉区では、いざという時に助け合える、顔の見える関係づくりをめざして、災害時の要援護者支援と地域での日常的な見守りが一体となった「住吉区地域見守り支援システム」の構築に取り組んでいます。区役所が把握している災害時要援護者(中重度要介護高齢者・重度障がい者・重度難病患者等)リストに基づき、本人に「災害時要援護者支援台帳」への登録を打診し、登録希望者台帳の管理と見守り訪問を地域活動協議会の支援員に委託するというものです。地域活動協議会では「見守り支援事務所」を設置し、常駐の相談支援員を配置して、町会単位に選任された地域相談支援員や地域支援員からの相談を受けたり、地域包括支援センター等の専門職との連絡調整を行います。

 現実的には支援員の登録に際して、「支援員設置要綱」に基づく「個別支援プランの作成」等の役割、訪問時に使用する顔写真入りの身分証の作成、守秘義務の誓約書等の諸手続きで敬遠する人も多く、人材がなかなか集まらないと言われています。
 ここで大事なことは形にこだわるのではなく、普段から顔の見える関係をできるだけ細やかに作っていくことにあります。できるだけ包括支援センターやケアマネジャー等の専門職の力も借りながら、身近な地域での声掛け・見守りの活動を始めることが重要です。関わった住民の経験を交流し、お互いに学び合う定期的な報告会が着実に地域の人材の育成の場として機能しはじめるでしょう。

 動き出した地域の支え合い活動を時間がかかっても着実に進めていく中に、地域の未来が見えてくるように思います。