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コラム「夢を抱いて」

成年後見制度のめざすもの

2024年7月

ライフサポート協会 理事長 村田 進

 2000年の社会福祉法制定により、社会福祉が権利となり、福祉サービスは本人との契約に基づくものと定められたことによって、認知症や精神・知的障がい等による判断能力に課題がある人の権利を守る「成年後見制度」が生まれました。

 厚生労働省によりますと、2025年の認知症高齢者数は700万人に上り、知的・精神障がい者数を含めますと1000万人を超える人が何らかの権利擁護支援ニーズを抱えることになります。しかし、昨年の成年後見制度の利用者は25万人弱で、圧倒的に不足しているのが現状です。

 政府は2016年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」を制定し、制度の利用促進・運用改善のために4年毎の基本計画を策定して改善を図ろうとしてきました。2022年3月に閣議決定された「第二期成年後見制度利用促進基本計画(2022〜26年)」は、成年後見制度の運用改善として「本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援・身上保護の重視」をあげ、多様な権利擁護支援ニーズに対しては、「成年後見制度以外の権利擁護支援策の総合的充実」を課題としています。

 成年後見制度では、後見人・保佐人等の支援者の不足問題、後見人が財産管理のみに業務を限定し身上保護を軽視する問題、そもそも本人意思を無視した包括的代理権と勘違いしている問題、認定手続きの煩雑さや期間の問題などが出ています。一方、日常生活自立支援事業のような成年後見に至る前の権利擁護支援でも、支援者不足による待機問題、本人意思を無視した金銭管理支援問題、緊急性に対して臨機応変に対応できない問題などがあります。制度利用に至らない人が頼った民間の身元保証サービス事業者でも、経営破綻や金銭トラブルが問題になってきています。

 基本計画の中間年に当たる今年、厚生労働省は専門家会議で計画の進捗状況の評価と充実策の検討を進めていますが、山積している課題解決を進める上で、なにより権利擁護支援の根本的意味を踏まえることが重要であるように思います。

 かつて岩間伸之は、「権利侵害からの保護」と「基本的ニーズの充足」を中心とする狭義の権利擁護では人間の尊厳を満たすことはできないとし、「本人らしい生活」と「本人らしい変化」を支える「積極的権利擁護」の重要性を訴えました。「本人らしい生活」の保障とは、自分の「存在」に意味と価値があることが社会関係の中で認められ、さらに本人が自分にとってのあるべき生活を主体的に創造していくことであり、「本人らしい変化」の保障とは、心身と環境の変化に伴って、社会資源の活用含めて周囲との支えあいの社会関係を結びながら新しい生活を創造していくことであると説明しています。(『高齢者の尊厳と権利擁護〜「積極的権利擁護」の推進に向けて』2007年 岩間)

 どんな人でも、加齢や病などにより判断能力が困難な事態に直面する時が来ることを考えれば、権利擁護支援の課題は一部の「判断能力の低い人」の問題ではなく、全ての住民にとっての「わが事」であるといえます。
 それゆえに、家族や地域の友人、専門職が、自分らしく地域で暮らしていきたいという私の思いを大切にしながら支えてくれることが必要です。できないことも多く、不安とプライドの中で揺れ動く私の心に寄り添って、私と一緒にこの先を考えてくれる支えが欲しいのです。
 「権利擁護支援」の根底に、人権を守る普遍的価値観を据えた取り組みが求められています。