更新日:2015年5月6日
常務理事 村田 進
世界に前例のない少子高齢化・人口減少社会に突入した日本社会。いまや年金・医療・介護などの社会保障費は年間100兆円を超える水準に達している。長寿社会を実現させた社会保障制度は、その維持のための財源確保が大きな課題となっている。
2013年8月の社会保障制度改革国民会議は「21世紀型の社会保障」を提唱し、(1)高齢者重点の社会保障から子ども・若者支援など全世代型の社会保障への転換、(2)制度の持続性の確保のために、消費税等の財源確保と、制度の効率的運用に向けた改革を打ち出した。
これを受けた自民党安倍政権は、消費税8%を実施したものの、昨年の総選挙を前に既定方針であった10%への増税を先送りにした。その結果、2015年度の介護保険・障害福祉サービス等の報酬改定では、基本報酬の軒並み減額が決定された。介護職員の処遇改善加算や事業の質的向上への加算制度は維持されたものの、事業の減収は避けられない状況である。また、介護保険制度では予防給付全体を制度から排除しようとする議論があり、その結果、2017年度までの猶予期間はあるものの、訪問介護と通所介護における予防事業が介護保険事業から地方自治体の生活支援事業に移行されることが決定されている。
更に、一部の社会福祉法人における不正行為や内部留保問題をきっかけに、社会福祉法人制度への批判が高まっており、国の社会保障審議会福祉部会では今年2月に「社会福祉法人改革の課題」として報告をまとめている。報告は、(1)公益性・非営利性の徹底、(2)国民に対する説明責任、(3)地域社会への貢献などを柱にしたもので、今後、社会福祉法の改正に向けた論議が進むことが予想される。
介護保険制度の効率的運用は「地域包括ケアシステム」の推進として打ち出され、障害者総合支援法では「地域移行・地域生活支援」「就労支援」が制度の柱として重点化されている。また、生活困窮者自立支援制度がスタートし、制度の狭間で放置されてきた地域社会で孤立した困窮者への支援が始まる。
これら一連の社会福祉制度の動向は「身近な地域で」「住民とともに」「包括的に」社会福祉事業に取り組むという方向で一致している。この背景には、福祉ニーズの量的増大のみならず、従来の行政や専門機関・事業者のみではとても対応できないニーズの複雑さ、多様さがある。国の制度改革論議も、限られた財源によって一貫性を欠き、ともすれば地方自治体や住民への責任転嫁ともとられかねない部分もあるが、大きな道筋は「地域での支え合い」をベースにした社会福祉をめざしている。
法人の拠点がある住吉区は、今年度から「住吉区地域福祉システムの構築」に本格的に取り組もうとしている。このシステムは、(1)災害時要援護者への日常的な住民による「地域見守り支援システム」、(2)制度の狭間や複数の福祉課題を抱え、地域で孤立している人をCSWなどの専門職が支援する「地域見守り支援事業」「生活困窮者自立支援事業」、(3)不登校や引きこもり、家庭の経済的問題等を抱えている子ども達への支援としての「子ども・若者育成支援事業」「すみよし学びあいサポート事業」からなり、福祉課題を抱えた住民の生活を行政・専門機関・地域住民・事業者・ボランティア等、様々な関係者で支えていこうという画期的なものである。まさに、法人がこの数年にわたって取り組もうとしてきた「個と地域の一体的支援」を推進する絶好のチャンスが巡ってきたといえる。
ただし、大阪市の橋下市長が提唱する「大阪都構想」(実質は大阪市の特別区分割案)をめぐる住民投票が5月に予定されており、その結果がどうなるかによって状況は大きく変わってしまう。法人としては大阪市の活力を解体し、市民への福祉サービスを低下させる「分割案」に全力で反対していく必要がある。
(1)報酬減額への対策と事業収益の確保
基本報酬の減額を受ける既存事業では、これまで以上に事業の質や稼働率の向上が求められる。看取りや専門職配置加算のみならず、重度対応、在宅訪問充実等への加算など、本人ニーズに対応した質的に高いサービスを追求するとともに、待機者の確保などに努めることで利用稼働率の維持・向上を図ることが重要である。これらの取り組みを通じて法人事業収益の確保に努めなければならない。
(2)既存事業のあり方の検討と事業重点化
一方、制度改革と地域生活支援の観点から、既存事業のあり方について抜本的に検討することが必要である。例えば介護保険事業では、24時間の地域生活を支える上で地域密着サービスが創設された。なかでも「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と「小規模多機能型居宅介護」がその双璧と位置づけられており、法人は後者を核としての地域展開を試みている。しかし、登録定員の枠と医療・看護との連携確保が課題となっており、一方で、予防支援が削減される訪問介護事業を地域支援の中でどのような役割を果たしていくべきか戦略的位置づけが急がれる。利用者の地域生活を保障するために単に法人事業だけでなく、他法人や地域住民との連携も含めてどのような支援体制を構築できるのか、早急に検討が必要である。
(3)地域ニーズへの対応と新規事業の展開
既存ニーズへの対応にとどまらず、増大する地域の福祉課題に応える法人新規事業の展開は不可欠となっている。
(1)障がい児者地域生活支援拠点の確保(重度対応・就労支援)
2015年度には、「新大領障がい事業施設」「泉北高倉台障がい者就労支援事業」等の新規活動拠点の開設が予定されている。「新大領施設」は、昨年、法人事業の利用者家族から法人の障害者支援事業にと施設提供の申し入れがあったもので、年内にも契約・利用開始の予定である。この施設では、特に重度の心身・知的の障がい者やこれまで取り組めていなかった未就学の発達障害児への支援事業に取り組む。
また、「泉北高倉台事業」は、堺市の「公募提案型協働推進事業」に選定されたもので、堺市社協・地元NPOと協働して、地域のコミュニティ支援に取り組む。ミニコンビニ、コミュニティレストラン、配食事業などを地域住民と法人の障害者就労支援事業との組み合わせで実施する予定となっている。
この他、住吉東駅前の喫茶店跡店舗を活用した障害者就労訓練事業所の開設を計画している。
(2)地域の総合相談拠点としての役割を果たすために(「北包括」の新センター移設)
市民交流センターの条例廃止の動きに対して、地元財団法人によって新たな地域拠点の建設が夏にも開始されようとしている。高齢化が進み、生活困難に陥る世帯も増えつつある住吉地域の在宅生活を支える総合的な相談拠点として「住吉区北地域包括支援センター」があるが、新拠点に移設し、地域住民の相談窓口との結節によってより機能を強化することを期している。新センターは来春に開所の予定である。
(3)地域保育事業と事業所内保育所の開設
子ども・子育て支援法の制定に伴い、小規模保育事業所の開設か可能になってきている。130人を超える法人職員の中でも、次第に保育所確保が大きな課題となってきており、2016年度には法人事業所内保育事業に取り組み、地域の保育ニーズにも対応していくことを計画している。今年中には開設場所や事業計画の確定・申請をする必要がある。
地域福祉を推進する上で、「専門機関のネットワーク」と「地域住民による支え合い活動」は不可欠の要素である。住吉区が取り組む地域見守り支援システムの推進に積極的に参画し、制度の狭間を越えた総合相談体制の確立に取り組む。
(1)包括運営三法人・行政の連携と制度を越えた総合相談支援体制の確立
まずは、専門機関の連携体制の確立、行政・福祉事業者等とのネットワーク化が急務の課題である。これまで、地域包括支援センターを中心に「介護保険事業者連絡会」や医師会等の関係者とのネットワークづくりを推進してきた。しかし、区の地域支援システムを実質的に展開していくためには、区段階における総合相談体制の確立が不可欠である。身近な地域での住民の見守り支援活動、それ支え連携する包括等の専門相談機関や事業所等のネットワーク、そして、それらの課題を区の段階で支援・調整するコーディネート機関、これらを整備することによって区の総合相談体制が現実のものとなっていく。
区内の四包括支援センターとそこに配属されたCSW、さらに今年度開設される「住吉区見守り支援室」と「生活困窮者支援室」が協働して区内の福祉相談に対応する専門相談体制の確立と区役所との日常的な連携を重ねていくことが重要である。
(2)地域住民と連携した地域見守り支援事業の推進
昨年度から取り組まれている災害時要援護者支援と孤立死防止を兼ねた「地域見守り支援事業」は、既に区内の半分の地域活動協議会で具体的な動きが始まっており、東粉浜・墨江・清水丘の3地域では要援護者リストが地域活動協議会に交付され、住民による日常的な見守り支援体制の構築の段階に入っている。包括支援センターとCSWを核にこの地域活動を積極的に支援し、個別事例への支援を通じて地域の見守り活動を支えていくことが求められている。「ひとつの事例が地域を変える」といわれるように、具体的な支援の活動を通じて地域における共同体意識を高め、支え合いの風土を作り上げていく上で、専門職の役割は大きい。その際、専門職として本人を支えるとともに、本人の立場に立って地域住民に関わりを求めていくが、なにより本人自身が地域との新たな関係の構築に関わっていく過程を支える「本人主体の支援」こそが重要である。このような地域支援実践の中で、法人における支援の質が問われていくことになる。
法人第4期中期計画は目標課題を概ね実現したといえるが、多くが今後も継続的に深めていくべき課題であり、引き続き第5期中期計画の課題として取り組む必要がある。
(1)法人資金流動性の向上と事業収益の安定化
法人事業規模の拡大に伴い資金流動性向上は重要な課題である。報酬削減などの制度改革の情勢も踏まえて、事業収益の安定化が引き続きの課題となっている。
(2)地域生活支援拠点の確立
増大する地域の福祉ニーズに対応するための新規事業の拡大、とりわけ堺泉北地域での障害者地域支援拠点の開発等が課題となっている。その際、単にニーズがあるからというのではなく、本人の地域生活を支援していく上で必要なサービスや支援の仕組みを構築する観点から、地域の様々な関係や事業者と連携して本人を支援することが重要である。地域住民をはじめ様々な関係者と連携しつつ、地域住民の支え合いの拠点をつくるという視点をもって取り組む。
(3)法人職員体制の確保と指導・管理体制の育成
2016年度以降の新規拠点と事業のために更に多くの職員の確保が必要となっている。常に早い段階から職員採用の取り組みを計画するが、インターンや実習生、アルバイト等でお互いを理解した上での採用方法を強化する。
拡大する事業と職員体制に対する指導・管理体制の整備が重要となっているが、法人20周年を迎える2019年を目途に体制の整備を行う。今期はそこに向けた基盤を形成する。
(4)社会福祉法人改革への対応
社会福祉法の改正を受けて、法人の内部統制機能の強化を図る必要がある。法人理事・理事長・理事会・評議員会等の機能の明確化、監査体制の強化等について、積極的に改革に取り組み、地域社会に貢献する社会福祉法人をめざす。
2015年度の報酬改訂は介護保険制度で基本単価が4.5%のマイナス、障がい者支援事業の基本単価も若干のマイナスになっている。同時に加算部分は増加している面もあり、トータルでは介護保険で2.27%のマイナス、障がい者支援はプラスマイナスゼロとなる。そのため法人としては以下のような対応で臨み、マイナスの影響の縮減をはかった。その結果、高齢事業部はほぼ横ばいで、障がい事業部は微増となり法人全体で前年度から5257万円増の11億4650万円の収入を見込んでいる。
1.体制の整備で加算を申請(高齢事業部)
法人内の看護職員が整ってきたことを踏まえて、とりわけマイナス幅の大きい特養などにおいては看護や口腔ケアにかかる加算取得を予定している。さらに小規模多機能は新たな加算取得で、マイナスの影響をカバーする
2.処遇改善加算の取得(高齢・障がいともに)
職員の処遇改善にかかる加算であるが、現状の給与の加算の上乗せとして「給与以外の処遇改善」が新設される。例示されているものにはすでに実施済みのものも多いが、「特別休暇(有休)の設定」「資格取得講習会や研修への費用支弁」「会議費として職場懇話会などの茶菓子代の出費」「腰痛対策や健康改善関連の器具購入」「こころの健康相談会への支出」といった内容で新規実施をおこなう予定である
3.稼働率の向上(高齢・障がいともに)
特養は31床での稼動とし、小規模多機能も2014年度末になってようやく登録人数が回復に乗ってきたので、年間通じた維持向上を図る。障がい部門は放課後デイや生活介護などは定員超過寸前のため困難であるが、2年目を迎える自立訓練つみきの稼動を上乗せさせて収入の増加をめざす
(1)人件費
決算見込から約4000万円の増額8億2198万円で計上している。これは2014年度の職員欠員が補充された場合ということもあり、また今後の事業展開を見据えた昇格に伴う増額も含まれる。しかしながら2014年度の事業不振や厳しい資金状況を反映して夏季賞与を前年度冬期に続いて縮減して計上している。
(2)事業費
総額1億1349万円で土地建物賃借料が事務費に移管されたことを見ると前年度並みといえる。しかし内容では電気代の大幅値上げや車検を迎える車両が多いこと、損害保険などの経費も増加している中で高騰化を可能な限り抑制している
(3)事務費
総額1億6272万円で前年度から2000万円増になっている。会計基準変更での増額を差し引けば基本的に前年度水準であるが、後述のように総セン・オガリの修繕が入るため増加幅も大きい
結果として経常活動収支差額は決算見込より1226万円減の2708万円となる
前述のように新規事業の計画があり、本格稼動は2016年度からになるが、今年度中に開始されるものや、設備などの整備をおこなうものもあるので予算計上している。泉北高倉台の就労支援事業所(2015年10月開設)・新大領拠点生活介護・児童発達支援(2016年1月開設)・駅前喫茶店跡の改装・事業所内保育所(2016年度開設)など合計1300万円が年度内に必要な額と見込み計上している。
前項の新規事業以外にも、総セン・オガリの電気関係の修繕・エレベーターやエアコンの部品交換があり修繕費に940万円が追加でかかっている。そのうち保育所開設300万円は行政補助金申請によって確保し、その他は金融機関からの借入をおこなう。また、人権協会からの借入金4000万円も返済する。
これらによって当期資金収支差額は244万円の黒字にはなるが、新たな借入も発生し、16年度にかけて新規事業の人的・物的な先行投資が必要になるため、2015〜16年度は資金確保と事業収益の安定確保が必須の課題になる。
高齢事業部長 福留 千佳
キーワード1)「安定的事業推進」 2)地域福祉推進に向けた体制づくり
1.体制・ユニット変更で本人主体・法人内連携の支援
体制変更を実施。さまざまな交流の機会(法人内外)、他部署と一緒に学ぶ機会をもつことで、人と人との関わり、交流を持つことの大切さに職員たち自身が気づくことで、利用者への支援に拡がりがみえてきた。する側される側ではなく、支援内容の見直しも行われ、より本人支援に近づく事ができた。
2.職員体制の強化
平均介護度4.3と重度の利用者が多く、常勤看護師を2名、非常勤看護師2名の4名体制とする事で、利用者の安心に繋がると共に、看護と介護の連携したプランに変わるきっかけできた。また、他部署間の応援体制にも繋がるよう法人内の看護師会議を実施した。
3.稼働率向上
上半期は、体制変更などもあり、空床の期間が長くなった。又、ショートステイにおいても、定期利用者のご逝去・入所により稼働率が低下するなか、新規のご利用者の獲得ができなかった。しかし、下半期においてはショートの稼働率も向上している。
1.在宅支援サービスでは、事業所が増える中、訪問介護、通所介護ともに健闘。特に通所介護事業所は稼働率のアップがみられた。
2.競合が多い中、選んでもらえる事業所として成長。通所介護は行きたい場所、楽しみにしているとサービスに対しても個別プランの充実により、利用者・ご家族から高評価を得ることができ、稼働率が安定している。
1.稼働率の停滞
きずな:年度末に相次いで利用者が逝去され、4月登録18名スタートと出遅れた。また、急なご逝去及び施設入所により更に登録減となったにもかかわらず、新規利用者の獲得ができなかった。補正予算を組み、予防支援の方々の受入もできるように運営に関しても見直しをおこなった。直ぐには成果はなかったが、現在目標の20名となった。であいも同様のことがあり、小規模多機能をご利用される方々が、在宅の最期の場所となる場合が多く、在宅生活がぎりぎりのところで保たれているためリスクは大きい。それ以上の利用者の獲得が課題となった。
2.職員体制の不備
きずな・であいと共に職員の退職・産休がある中、欠員補充ができないままであった。稼働率が悪いということもあり、職員間のフォローでしのいだ。益を生まないスパイラルにならないよう体制を確保していく。
1.住吉区における地域支援推進に重要な役割(ネットワークの形成)
医療と介護の連携事業が府立HPを中心として 医師会・薬剤師会・歯科医師会の3医師会が、ともにネットワークを形成する一端を担えた。医療とのとのネットワークが拡がれば、今後の地域包括ケアにとっても大きな意味がある。
2.予防的活動・防災・高齢以外の相談対応・地域ケア会議・地域連携
3.孤立死防止モデル事業に参画しCSW(コミュニティーソーシャルワーカー)を配置。北包括圏域の多様な相談支援体制づくりに着手した。
4.居宅は、要介護から、要支援、死去等によりもち件数減があり、今年度落ち込みがみられた。包括からのケースも積極的に受託するももち件数は増えたものの、減を緩和するまでにはいたらなかった。
1.稼働率UPへの仕組み
空床期間の短縮化 1週間以内に次の方の決定をする。
2.減収に対応した加算の確保・・・基本単価約80〜100単位の減収分を日常生活継続支援加算(13単位)・口腔衛生管理体制加算(30単位)・認知症ケア専門加算?(4単位)の増加や新規取得で影響を最小化する
3.ユニットケアの推進 本人支援の追及
4.施設改修の計画 10年をむかえ修繕及び、改修が必要になってきており行政と調整しながら今年度中に改修計画を策定する。
1.減収に対応した加算の確保・・・通所は基本単価40単位減を個別機能訓練加算?・サービス提供体制加算?・認知症加算の取得等によって減少の影響を抑えるが、予防の方は対応できない。ヘルパーは予防の方の利用率が高いため減収の予算計上をしている
2.制度改正後をにらんだ地域支援総合事業の展開策を年内に策定する
1.減収に対応した加算の確保・・・基本単価の減をきずなは訪問加算等の取得でむしろ増額で計上可能と見ている。であいでは職員配置が整わず減収は避けられないが今後のことを含めて体制整備に努める
2.稼働率UPへの仕組み
待機者の確保としてそれぞれの事業が担う特性を充分に生かす。であいのグループホームで、認知症対応型のデイサービスの受け入れをすることによる小規模多機能とグループホームの待機者の確保をめざす。
1.住吉区地域支援システムへの参画(ネットワーク)
専門機関とのネットワークを組むことで、よりスムーズな総合相談体制を確立していく。
2.地域連携(個別支援を通じた地域住民との協働)
地域課題抽出型の地域ケア会議の開催を意図して実施し、地域住民との協働を図る。
障がい事業部長 原田 徹
運営と現場の意思疎通の強化が2014年度の最大のテーマであった。施設長の交代により、その目的は概ね達成できたといえる。また主任をオガリと総センの4人制にすることで、各々の良さが強化され、風通しの良い職場になったと考える。また主任の主体性が芽生えてきた1年であった。
各々の事業については、事業間連携が分断されている状況は回復されていないものの、若いスタッフは大領新施設企画や農園企画等の新規事業を通じて意識的に連携を模索する姿勢が見え始めいることは成果といえる。副主任、中堅職員の意識変革が今後の課題であり、この意識変革が事業拡大及び質の向上につながるといえよう。
最後に、新規訓練事業の「つみき」が思いのほか実績が伸びず、(株)ウェルシアとの連携も頓挫したため、収入的には予算を下回った。訓練事業と日中活動事業とのつながりが見えにくく、イメージがしにくかったことが原因と見られる。このあたりを可視化し来年度につなげていきたい。
こちらも主任3人制にすることで、事業所運営に安定感が出てきた1年であった。
放課後等デイサービスに関しては、事業所乱立の影響もあり、これまでのように欠席利用者枠の補填が上手くいかず収入的には減収となったが、これまでが想定以上の増収であったため、止むを得ないことであると考える。また、支援学校の枠が変更されることにより、難波支援、住之江支援、住吉南支援各校ごとの対応は後手に回ったが、じらふ難波の独立など現場サイドでの企画がなされており、スタッフの成長が見られた1年でもあった。
ヘルパー事業に関しては、新主任、新職員の配置、ベテランの兼務等で年度当初は多少の出遅れも見られたが、現在は落ち着きを取り戻している。副主任2名も産休の中、及第点の1年であり、来年度に期待が持てる1年であったと考えられる。
こちらも新係長が主任兼務をすることとなり、副主任が異動、グループホームが事業編成上による管理下になり、スタッフの年度途中の異動など不安定な1年であったと考える。
しかしながら、地域活動センターの変化は周知の事実であり、スタッフの頑張りにより質の高い支援が提供されていると自負している。
相談支援においては、主任相談員の個のスキルにより高い評価を得ているものの個の力には限界があり、相談体制の組織化が急務であることも事実である。
グループホームにおいては、年度当初にグループホームから一人暮らしへの移行を成功させたことは評価できるものの、欠員補充がスムーズにできなかったことは今後の課題である。しかし、制度の変更等にも敏感に対応しており、新人3人を加えたメンバーでありながらもよく踏ん張った1年であった。グループホームに対する潜在ニーズも理解しており、新規事業へも目が向けられており、今後の発展に期待が持てる1年となった。
放課後等デイサービスは完全に軌道に乗った。ガイドヘルパー派遣も少しずつではあるが実績を伸ばしている。地域連携に力にも力を入れており、地域の子どもたちとの繋がりもできており、他にはない放課後等デイサービスの形ができつつある。ただ常勤4名を配置しているため、もう少しガイヘルの実績は上げなければならなかった。
事業規模的には2015年度は大きく変化はない。しかし、つみきでの人員増が見込まれており、収入的には多少の上積みは見込まれる。2016年度の大領での日中活動の場所増設、農園事業の事業化に向けて、現存事業間での意思疎通、連携の意識付けが来年度の大きな課題となる。
2016年度には、目的別に大きく事業組織の改革を考えており、その礎を作る一年としたい。
事業所乱立が一定収まってくるであろうと予想され、今後は事業所の質により淘汰されていくであろう。そのためにも「じらふ」の目指すものを明確に示し、4事業所の対応支援学校(対応地域)を明確にすることで、選ばれる事業所として確立していく必要がある。また、年齢層、障がいの状況などによるプラグラムの精査、必要に応じた活動の場の増設など議論の1年にしたい。
収入的には新規事業を立ち上げない限りは、増額はあまり望めない。また休日は6時間以上開所しないと報酬が減額されるため、合わせて事業内容の再検討が望まれる。
職員欠員補充をすることで、さらに質の向上は見込まれる。ふうが利用者を対象としたつみきサテライトも認知を得てくるため、中身のある事業展開が望まれる。しかしながら、精神障害の特性もあり、事業収入を目的では事業自体をつぶしかねない。収支は意識しながらも、丁寧な事業展開が望まれる。
相談支援は、産休明けのスタッフの復帰状況を見ながら、中堅どころを配置し計画相談の強化に努めたい。
グループホームは、2014年度後半に定員も埋まり安定して運営できている。潜在ニーズを上手に掴み今後の事業展開を考える1年にしたい。
2016年には多くの卒業生を迎えるため、日中活動の場の設立は急務である。高倉台のふれあいマーケット企画を皮切りに、成人事業の場所の開設を見据えた1年としたい。放課後等デイサービスも小学生対象の事業所を諦めず考えていきたい。
2017年度には、事業高1億円越えを目標に、事業の形を考えていきたい。
全事業に言えることであるが、常に地域連携を意識した事業運営を行っていきたい。簡単なところでは、挨拶の徹底、地域行事への協力、事業への協力の呼びかけなど、地域と一緒に支援体制を作るという意識付けを進めていきたいと考える。
また、住吉地域においては自立支援協議会を通じたネットワークの強化を進めていきたい。利用者、事業所のニーズ調査を実施し、事務局の方針ありきではなく、ニーズありきの自立支援協議会、地域ネットワークのあり方を探っていきたい。そのためにも若い世代へのバトンタッチを進めていく必要性があると考える。
現在、堺泉北地域で撤退したスーパーマーケットの再生を地元地域と一緒に進めている。撤退したスーパーからノウハウをもらい、地元NPO法人の配食サービスとコラボをし、障がい者就労の場として簡易スーパー及びサロンの運営を行う。将来的には障害者就労の場を発展的解消し、シルバー人材の雇用、母子家庭の就労の場も含めた生活困窮者の中間就労の場として地域に根差した活動へとつなげていきたいと考える。
法人本部事務局長 石田信彦
経理では2015年度からの「新会計基準」移行に伴う規程の変更や拠点区分の見直し、請求ソフトのバージョンアップといった業務が随時入ったため、パートの補充などの対策を取るが業務過多な状況が続いた。人事労務では給与計算業務を外部委託として担当者の業務過多を軽減し確実な労務データを取得できる条件を整えた。施設管理では資金状況を見ながら繰延べできるものは繰り延べて資金の枯渇を防ぐ対応をおこなった。また防災マニュアルを2年ぶりに改訂し、小冊子方式からデータ方式に変えてスマートフォンなどに入れておけるものにしたが、その他の防災の取り組みは途上である
(1)業務効率化と合理的運用
経理・労務は年間の中で業務の多寡があり、依然として時間外業務が多いが、給与計算の外部委託と経理パートの配置で効率化を図る。
(2)情報周知・広報の強化
外部への発信強化として、「ホームページ再構築」を法人第5期の課題に挙げる。現在および将来の事業展開にあわせた構成の見直しと各種取り組み(事業のみならず研修・虐待防止など)の報告周知を強化したい。内部においても各施設・事業所の予定を一覧化し情報共有を図る仕組みや社内報(本部つうしん)の強化を図る
(3)人材確保
リクナビなどの媒体の活用や就職フェア参加の方針見直し(現場職員の参画)含めて2016年度新事業開設時に備える。高齢・障がいの事業部ごとの募集枠を設定し、多くの応募者獲得にもつなげる。
(4)施設管理業務の計画化
法人第5期中期事業計画にも設備更新と必要な費用を盛り込めるように調査に取り組む。施設・車両や物品の管理状況を一覧で確認できる方策の検討
(5)地域と連動し法人各施設をつなげた防災の取り組み
防災訓練も各施設事業所での「図上訓練」「避難訓練」とともに、法人としての全体の動き(他の施設への応援や情報収集など)を作れるように地域各機関とも連携されたものとして実施していく。
実際の災害時においては「福祉避難所」の機能を担う(なごみ・総セン・であい)ので、防災グッズや発電機などの整備と置き場所や使用法や運用マニュアルの整備と周知、2015年度には説明会を兼ねた形で実施する(消防訓練・災害対策本部設置訓練・福祉避難所開設訓練・発電機使用法と備品機材の設置場所説明など)