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2019年度事業計画

更新日:2019年4月17日

1. 法人をめぐる情勢と課題

1)2040年を見据えた社会保障改革論議

 今年3月に開かれた国の社会保障審議会は、高齢者数がピークを迎える2040年頃を展望する新たな社会保障改革の全体像について、国民的議論の必要性を打ち出した。この背景には、2つの大きな社会的変化の予測がある。

 第1には、団塊の世代ジュニアが高齢者入りし、社会保障給付費が190兆円(GNP比24%)という過去最高のレベルに達するという見通し。第2には、2025年以降、「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に社会構造の局面が大きく変化すると予測される点である。2025年から2040年への高齢者の人口は6.6%増であるのに対して、生産年齢人口は▲16.6%と大幅に減少すると見られている。

 これらの予測に対して、審議会資料では、社会保障給付増には「これまでの給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保」策を引き続き取り組み、医療・介護の就業者減には「高齢者をはじめとして多様な就労・社会参加の促進で健康寿命の延伸」と「テクノロジーの活用等で医療・介護サービスの生産性向上」により対応するとしている。

2)国のあり方全体を見据えた抜本改革の必要性

 残念ながら社会保障審議会の議論は従来の政策枠を超えられないため、多くは希望的観測に基づくものになっている。例えば、医療・介護サービスの就業者数見通しては、2025年から2040年で従来の計画ベースで134万人増となるところを上記の「健康寿命の延伸と生産性向上」でわずか4万人増にまで抑制するとしている。(全就業者数が699万人減少するにもかかわらず)

 いまやGDPの4分の1を占めるに至っている日本の社会保障を維持していくためには、これまでの社会のあり方を抜本的に見直す大胆な政策転換が求められている。そのポイントは、「社会保障財源の確実な確保」と「安定的な労働人口の確保」にある。そこでは消費増税と所得税の累進強化等による増税策と、外国人労働者への門戸開放という日本社会のあり様を大きく転換するビジョンが必要である。同時に、これまでの「自己責任社会」から「みんなで支え合い安心して暮らせる社会」や「多様な人々が尊重し合って暮らせる社会」等への転換についての国民的論議が求められている。

3)「我が事、丸ごと」と「地域共生社会の実現」は私たちみんなの課題

 昨年4月に改正された社会福祉法は「全世代型社会保障の推進」「我が事、丸ごとの地域づくり」「地域共生社会の実現」を推進することを目指したものであった。高齢者から児童まで全ての住民を対象に、地域で困難に陥っている人々を早期に発見して制度の縦割りを超えた包括的支援によって支えていく仕組みを通じて、これまで排除されてきた生活困難者を地域で支え合って暮らしていける社会をつくろうという画期的なものである。

 この実現は法人使命そのものであり、①専門職の連携協働のネットワークづくり、②地域住民の支え合い活動への支援という課題に具体的に取り組んでいくことが求められている。

 改めて地域を基盤とするソーシャルワークで重要なことは、第1に身近な地域での多様な支援者の連携・協働の場を作ることである。地域包括支援センターの地域ケア会議をはじめとする専門職・地域住民・事業者の協働実践を積み上げていくことで地域の福祉力向上を目指していきたい。

 さらに重要な課題は、生活困難を抱えている人々が地域で「役割」を持てる多様な「働く場」(ソーシャルファーム)を作っていくことである。福祉当事者と地域住民との自然な交流や協働作業の中で、本人は自尊心を、住民は人権意識を育み、一人ひとりを同じ人間として自然と尊重し合う風土がまちづくりにつながる。「地域共生社会」は地域での具体的協働活動の中からしか生まれないことを肝に銘じて、地域福祉の実践を重ねていきたい。

 多様な人々が福祉問題に関わろうとしている今日、社会福祉法人こそが地域の物的・人的社会的資源として積極的に地域福祉に取り組み、多様な住民との人権のまちづくりに奮闘することが求められている。

2. 事業部計画

1)2018年度を振り返って

 2018年度は新規事業や大きな事業改革はなかったが、自然災害も多くいろんな意味で不安定な1年であった。そのような中で、法人事業は若干未達であったものの、ほぼ予算通りに終われたことは一安心といえる。

 2019年に向けて、稼働率の見直しや各事業所においても課題整理に時間を費やすことができた1年であったと考える。障がい者就労の新規事業に向け、企業とのコラボ作品の製造、給食及び介護チームによる高齢部門との連携の土台作りもでき、2〜3年後の充実が期待される。また、泉北事業の拠点となる場所が見つかり今後の事業の基幹が見えてきた。

第7期の充実に向けた準備の一年であったといえる。

2)2019年度事業計画

 2018年度の報酬改定では、福祉事業全体的に報酬単価が確実に引き下げられた。その背景として、生活保障に対する国、地方自治体、国民の意識の低さがある。福祉の充実は国民にとってのセーフティネットの確立であり、国民全体の安心・安全な生活につながるものである。しかしながら、福祉事業に関わる現場の声は反映されていない。いくつもの加算を付けるといった具合で削減をごまかされ、福祉事業の報酬単価は事実上引き下げられているのが現状である。また、その加算も理由にならない理由により数年おきに消滅したり、新しい加算を作ったりとその場しのぎの政策であり、国民の福祉の充実は眼中になく、現場の事務量も増える一方である。

 例えば、障がい者グループホームでは、施設からの地域移行によりグループホームで生活を始めたものが、安定した生活を送られるようになると加算が切られる。2019年度予算ではグループホームでは稼働率は変わらないにも関わらず300万円程度の減収になる。これは、同一労働同一賃金を謳っている厚生労働省自身の矛盾であると考える。このように福祉事業においては仕事の質に対する評価がされないことも、国が生活保障を軽視していると考える所以である。

 我々は、行政の無責任な立場による運営への介入に対して厳しい目を向けつつも、現状の法制度の中での生き残りを模索していかなければならない。

 2016年に低下した稼働率を2017年から2018年にかけて元に戻してきたものの、2018年度に行った利用者数の整理では、定員に余裕のある事業部が判明した。このことから、2019年は更に稼働率の向上を視野に入れ、その安定のための計画と人材配置の適正化に努めていきたい。また高齢、障がいの両部門のニーズを繋ぎ合わせることで新しい連携を模索し2018年度に築いた土台を強固なものにし、より良い利用者支援に繋げていきたい。

 泉北に関しては2020年開設の拠点事業のスムーズなスタートに向けて、広報活動に力を入れていきたい。また新拠点での事業内容をスタッフと共に考え、より良い利用者支援に繋がるプログラムを作っていきたい。

 締め付けが厳しくなっている障がい児通所部門では、昔ながらのじらふの良さは壊さず、時代にあった放課後等デイサービスの形を模索したい。ソダテルじらふからじらふへ、じらふからつみきへと繋がりを意識し、保護者、利用児が活用したい場所を再構築していきたい。また、じらふ泉北においては、中高生からの脱却も視野に入れ、スタッフのスキルを最大限生かしながら、利用者に選ばれる事業内容を模索したい。

 グループホームにおいては、潜在ニーズは高いため、今後も新しいグループホームの開設に向けた動きだけではなく、高齢者、障がい者を問わず利用できるサービス付き住宅の確保についても検討を始めていきたいと考える。ヘルパーに関しても将来的にグループホームの支援、サービス付き住宅への支援も視野に入れた強化が必要であると考え、生活支援のニーズに対する適切な対応を進めていきたい。また若いスタッフの生活支援力、生活力の強化のためにも積極的に人事異動を行い、スタッフのスキルアップの場としても活用していきたいと考える。

 その他、小規模多機能型居宅介護及び特別養護老人ホームでは2018年度は安定的に稼働してきたので維持しつつも、稼働率低下への対応ができる準備を考えていかなければならない。

 地域活動支援センターから就労支援B型への移行者やふうが利用者発の事業展開を今年も考えていきたい。利用者が安心できる場所、興味が持てるプログラムの構築が、利用者の安定利用に繋がる。引き続き丁寧な支援を心がけ、活動の充実を図っていきたい。

 稼働率の管理による収入の確保と併せて人件費の管理への意識も強化していきたい。職員数が質を担保するのではなく、適材適所への人材配置、役割の明確化を持って支援の質を上げていきたい。そうすることにより、人件費率を下げながらも一人当たりの単価を上げることにより、スタッフのモチベーションの維持にも努めていきたい。

 最後に、包括支援センターやふうがなど法人の相談機関が中心となって作って来たネットワークによる専門職の連携や、交流の場の継続的な運営による住民支援にも引き続き力を入れていく。これらの活動に法人全体で関われるようスタッフにも周知すると共に、ニーズのくみ上げによる誰もが住みやすい街づくりを意識できる1年としたい。

3. 法人本部と組織の課題

1)法人本部組織

 2018年度は法人本部組織として事務局次長を据えて、退職や休職などによる業務変更が多かった担当者を束ねる役割を果たしたが、年度末に事務局次長自身も退職となり、本部体制の安定は引き続きの課題となる。2019年度は次長は空位とし、各担当者間の連携で業務遂行を進めていく形になる。総務体制の安定は法人第7期の課題として持越しとなる。

2)基幹会議と経営分析

 理事会は①6月:2018年度決算、②9月:泉北新拠点の状況、③11月:中間決算と補正予算、④3月:2020年度予算と年4回の開催を予定している。大きな経営判断や随時の収支の状況を踏まえた論議をおこなう。

 経営会議は毎週水曜日を定例として、およそ年に48回を予定している。日常の経営判断や各事業所の状況を把握する場になっている。

 その基幹会議の根幹には収支の状況や人事(人件費・人員配置)を把握する資料が不可欠であるため、現在は遅れがちであるが月次の決算および勤怠・労務のデータ提供が求められる。他法人や他事業所との比較分析や改善策の検討をおこなうことが課題になっている。

3)働き方改革法施行に向けての取組みおよび労務上の課題

 働き方改革法の施行にあわせて、加えて労務環境の変容にともなって下記の取組みが求められている。実施が迫ったものは周知しているが、継続検討中の課題については2020年度実施をめどに論議をおこなっていく。

働き方改革法施行に向けての取組みおよび労務上の課題
取組み 課題 実施時期
5年継続雇用の非常勤職員の無期雇用化 既に随時説明済み~規程などの整備は残す 2018年度~
時間外労働規制 月間45時間上限(特例で80時間も継続不可)など
主任周知は済みも小規模多機能などで実施困難が予測される。毎月のデータをもとに改善の計画を事業部あげて取り組む
2019年度~
有休5日取得義務化 2018実績で取得が満たない職員には計画策定。月間勤怠状況で随時確認予定 2019年度~
勤務間インターバル 前夜終業(残業含む)から翌朝始業までの時間を11時間開ける。主任周知は済みも小規模多機能などで実施困難といわれるので、フレックスでの出勤や早出・遅出者の活用で遵守につなげるようにする 2019年度~
同一労働同一賃金 非常勤職員との格差をなくすための諸施策を検討(福利厚生や手当の共通化・業務内容の同一でない部分を説明する資料作成) 2020年度~
定年延長 現在60歳定年を65歳に延長する議論を開始(処遇のあり方や退職金などの運用について検討中) 2020年度~

4. 法人20周年

 1999年7月に設立した法人も本年で20周年を迎える。本年7月6日(土)13:00〜総セン大広間での記念式典(「めもりーず」横尾氏の講演・功労者表彰など。記念品頒布)、職員懇親会、記念誌作成といった記念事業について担当者を選出し計画中である。20年の歩みを振り返り、内外に発信する機会としてとらえて遂行していく。

 

2019年度予算の概要

1. 収入

 2018年度は法人本部組織として事務局次長を据えて、退職や休職などによる業務変更が多かった担当者を束ねる役割を果たしたが、年度末に事務局次長自身も退職となり、本部体制の安定は引き続きの課題となる。2019年度は次長は空位とし、各担当者間の連携で業務遂行を進めていく形になる。総務体制の安定は法人第7期の課題として持越しとなる。

2. 支出

1)人件費の大幅増

 人件費は2018年度の決算見込みからも2500万円の増となり9億2858万円になる見込みである。理由は下記の通りになる
・2018年度の正職員離職者が12名【離職率8.3%(前年度14.3%)】と予測よりも少なく、育児休業からの復職者も9名に及び、採用内定者の方が上回る状況に陥った。非常勤職員の稼働時数を調整することになるが、全体的に基本給を押し上げた(2018:正職員145名→2019:正職員154名)
・不規則勤務関連の部門の処遇改善(手当の増額など)をおこなった
・最低賃金の上昇・同一労働同一賃金の関連でパート職員の時給増を実施し、今後も各種手当を正職員に代わらない水準まで引き上げる必要に迫られた
・調理の直営化により、法人雇用で調理師を雇った(委託費は減額)

2)その他の経費

 事業費は2018年予算からは570万円減の9984万円を計上する。決算見込みではさらに縮減が図れる見通しではあるが、現実的な経費としてもほぼ維持した数字で予算化をしている。

 事務費は2018年度予算・決算見込みとほぼ同じ水準の1億5432万円で計上する。内訳は別表の通りになるが、調理の直営化による業務委託費1200万円の縮減(昼食をとっていた各部門の委託費を縮減)をおこなう一方で、包括予防支援の委託費増額、オガリ作業所のトイレの扉設置や泉北拠点の半年分の家賃も発生しているため経費もいくぶん増大している分野もある。

 施設整備関連では泉北拠点整備にかかわる借入で2000万円とリフト購入の助成金で32万円を計上している。支出は2018年度に入金済みの「らふら」の改装工事(丸紅基金から200万)の執行が2019年度になったため経費支出のみおこなう。泉北拠点の内装整備で800万、備品購入関連で500万、大領COCOROでの車両の増車もあり支出は5712万円に及ぶ。

 上記の結果、当期資金収支差額は152万円の黒字となるが、極めて厳しい予算でもあり、毎月の収入および人件費の状況を確認し、適切に執行管理をおこなうことが課題になる。

2019年度 役員報酬額について

・前述の状況も鑑み、役員報酬は据え置きとするが、非常勤役員報酬は税控除後の支払額を3千円とする改訂で提案する。

 

役員報酬規程 別表1(常勤役員等の報酬)
役職名 報酬の月額 年俸
理事長(短時間) 月額 30万円 360万円
常務理事 月額 60万円 720万円

 

役員報酬規程 別表3(非常勤役員等の報酬)
  日額
評議員会・理事会・監事監査等会議への出席 3,000円(税別)
上記の他、法人及び施設事業のための出勤 3,000円(税別)