pagetop

文字サイズ:小 中 大

2021年度事業計画

更新日:2021年3月28日

1.2021年度の法人事業

(1)2020年度を振り返って

 2020年度はコロナ禍に見舞われた不安定な1年であった。コロナ感染による事業の停止が各事業で多少あったものの、法人の事業収入はほぼ予算通りであり、収益に関しては予算を若干ではあるが上回って終われそうであり一安心といえる。

 大きな要因の一つとして、2019年度において融資がなかなか降りず運営が不安視されていた泉北地域の新規施設「はぴな」開設と順調な運営状況にある。ほぼ同数のスタッフで倍の収入を上げられたことは評価できる。2021年度に向けても順調に利用者を増やしている。

 また2019年度、2020年に向けて、稼働率の見直しや各事業所においても課題整理に時間を費やすことができた成果により、大きな稼働率の低下もほぼ見られず、一時は前年比30%の稼働率まで落ち込んだ大領COCORO児童発達支援(つばめ)に関しても2021年度に向け稼働率を増やしつつある。障害部門と高齢部門との連携なども順調に成果を見せつつあり、2〜3年後の充実が期待される。

 そういった意味では、昨年に引き続き法人第7期に向け、しっかりと準備のできた1年であったともいえる。

 昨年度の振り返りでも述べたが、2018年度の報酬改定では、福祉事業において全体的に報酬単価が引き下げられた。その大きな理由としては自己責任論に傾倒し過ぎたため、生活保障に対しての国、地方自治体の意識の低さ、国民の基本的人権に対しての認識の低さにあると考える。福祉の充実は国民にとってのセーフティネットの確立であり、国民全体の安心・安全な生活にもつながる。福祉の充実こそが人権社会を実現する第一歩となる。

 このコロナ禍では、生活支援の在り方について見直す良い機会になっているのではないかと考える。コロナを理由に休所を選択する事業所、休所を要求する職員も少なからずあり、利用者の日常生活が脅かされる状況もあった。そういう状況の中、エッセンシャルワーカーとして社会福祉の現場の必要性が、見直されるきっかけとなったことは大きい。また当法人の職員においては、休所を選択することなく、できる限り普段通りの実践を心掛けてくれたことには感謝しかない。ただ、それが2021年度からの報酬改定に反映されていないことは、とても歯がゆい事態である。

 不要不急な生活支援はない。社会状況に惑わされず普段通りの実践を続けていくには、しっかりとした財政基盤が必要である。そのためにも、いくつもの加算を付ける形ではなく、福祉事業の基本報酬をしっかりと担保し、行政には質の向上に向けた監督指導が求められる。2000年の社会福祉基礎構造改革以降、福祉事業の規制緩和により、福祉サービスが広がり福祉事業所が増加し民営化が進められた。その一方で、福祉行政に現場の声が届きにくくなり、福祉行政が数字でしか質を判断できなくなっている。福祉現場及び利用者の声を聴かない行政職員が中堅から管理職になる行く末は、利用者ニーズ、権利保障を優先する福祉事業所にとっては暗黒の時代の到来であるといっても過言ではない。

 このコロナ禍で明らかになったエッセンシャルワーカーとしての役割を、我々社会福祉事業者が実践の中で社会に示していく必要性を感じさせられた一年であったといえる。

(2)全体について

 各事業においては、2016年に低下した稼働率を2017年から2018年にかけて元に戻してきた。2018年度は利用者数の定員と稼働率の整理による現状把握を行った。2019年度にそれを基に定員に余裕のある事業部へ新たな利用者獲得を働きかけ、稼働率の向上及び、その安定のための事業計画と人材配置の適正化に努めてきた。その結果、若干ではあるが予算を上回る事業収入を得ることができた。2020年度も昨年に引き続き、順調な一年であった。

 2021年度は報酬単価の実質的な削減となるが、稼働率の管理による収入の確保と併せて人件費の管理への意識も強化していきたい。その上で、高齢・障がい各部署が連携して取り組める事業を考えていきたい。適材適所への人材配置、役割の明確化、仕事の共有を持って支援の質を上げていきたい。人件費率を抑えながらも一人当たりの収入を上げることにより、スタッフのモチベーションの維持にも努めていきたい。締め付けが厳しくなっている障がい児通所部門では、昔ながらのじらふの良さは壊さず、時代にあった放課後等デイサービスの形を模索したい。つばめからじらふへ、じらふからつみきへと繋がりを意識し、保護者、利用児が活用したいと思える場所を再構築していきたい。

(3)泉北拠点の安定化

 泉北に関しては2020年に開設した生活介護はぴなが順調に運営できており、今後、さらに利用者を獲得していくためにも、より良い利用者支援に繋がるプログラム作りが期待される。

 また、じらふ泉北においては、職員数を安定させることで、児童発達支援及び低学年層の利用の促進を視野に入れ立て直していきたいと考える。これまで培ってきた実践とスタッフのスキルを最大限生かしながら、利用者に選ばれる事業内容を模索したい。

(4)居宅支援に向けた将来ビジョンの検討会の立ち上げ

 2021年度には障がい者グループホーム(6室12名定員)を開設する。夫婦での入居などもあり、グループホームの利用の幅が増やせるよう考えていきたい。また住居の課題については、潜在ニーズが高いため、今後も新しいグループホームの開設に向けて高齢、障害を問わず検討をするとともに、グループホームだけでなくより幅広い人が利用できるサービス付き住宅の確保についても検討を始めていきたいと考える。ヘルパーに関しても将来的にグループホームの支援、サービス付き住宅への支援も視野に入れた強化が必要であると考え、生活支援ニーズに対する適切な対応を進めていきたい。また若いスタッフの生活支援力、生活力を強化するためにも今ある生活の場から積極的に仕事の共有を行い、スタッフのスキルアップの場としても活用していきたいと考える。

 小規模多機能型居宅介護及び特別養護老人ホームでは、2020年度は利用者の逝去などで稼働率低下がみられた。高齢者事業特有の現象への対応ができる準備を常に考えていかなければならない。

 特別養護老人ホームや認知症グループホームにおいても、先述した障がい者の住居課題を合わせて、現状に応じた事業変更も視野に入れ検討委員会を立ち上げていきたいと考える。特に認知症グループホームのスペースの有効活用をテーマに、ニーズに対応し且つ事業安定が見込める活用を考えていきたい。

(5)地域の声を実践に

 地域活動支援センターから生活介護への移行及び地域課題に応じた地域活動センターの有効活用を考えていきたい。精神障がい者の生活介護に関しては利用者が安心できる場所、興味を持てるプログラムの構築が、利用者の安定利用に繋がる。また地域活動支援センターを地域に開くことで、新たな地域課題の発見や、地域との連携の強化が見込まれる。引き続き丁寧な支援を心がけ、活動の充実を図っていきたい。

 最後に、包括支援センターやふうがなど法人の相談機関が中心となって作って来たネットワークによる専門職の連携、また、継続的な交流の場の運営による住民支援にも引き続き力を入れていく。法人研修だけでなく、地域住民の方々に向けての研修や活動を続けることで、個と地域の一体的支援を実現化していく。このような活動に法人全体で関われるようスタッフにも周知すると共に、ニーズをくみ上げ、誰もが住みやすい街づくりをスタッフ共々意識できる1年としたい。

2.法人運営と総務の課題

(1) 法人役員改選と管理職体制

 2021年は役員改選年にあたるが、前述のような幅広い課題にあたるため、運営管理に際しても「地域の視点」「福祉実践的見地」「財務的見地」「中長期視点」などの多面的な視点から評価点検できる体制の構築が課題になる。

 法人管理職についても課長を1名増員し、拡大する事業の運営責任の分与と、世代交代を見据えた登用をおこないながら、管理体制の強化につなげる。

(2) 人事労務管理の課題
   (次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法に基づく行動計画)

 2021年度においても継続して時間外労働の抑制・適正化と有給休暇取得を始めとした働きやすい環境整備に取り組む。

 2020年度における有休取得目標はフルタイム勤務に換算して一人年間12日であるが、1月時点では達成水準に見たっていない。おそらく新型コロナ感染拡大を受けてパート職員中心に有給休暇よりも、欠勤による休業補償制度の活用を優先したこともあると思われる。そのこともあり、2021年度についても目標12日で継続としたい。

 また2020年度における時間外労働時数はフルタイム勤務に換算して一人1カ月平均5.0時間を目標としたが、こちらも僅かながら超過する見込みである。年度途中の職員の休退職などもあって、一部の部門の限定した職員ではあるが、かなりの長時間勤務になってしまったことが原因である。引き続き1カ月平均5時間未満を目標として継続したい。

 2020年度から新人事システムの導入を開始し、パート・アルバイト職員においても、一定以上の業務を担う場合は、面接を行なったうえで正職員と同様の処遇(時給の同等水準への引き上げと賞与の支給など)をおこなっている。制度も浸透しはじめ、数名の昇格者を出している。

(3) 採用・広報

 長きにわたって介護職員の確保が大変厳しい状況が続いており、ライフサポート協会においても高齢部門介護職員の確保に至難をきたしている。

 2021年1月より求職者のプロフィールと法人の求人内容に見合う人材をマッチングするサイトの活用も開始し、従来型の求人広告を縮減しながら、人材確保を継続的に取り組む。

 海外出身人材の確保では、2020年度に続いて大阪健康福祉短期大学から留学生の紹介(学業後の遅出アルバイト〜卒業後はみなし介護福祉士としてのフルタイム勤務)を頂けることになっている。就業中の学生とあわせて5名が2021年度は特養なごみで就業する予定になっている。技能実習生の紹介会社経由の人材も4名おり、特養・きずな・なごみデイ・であい高齢グループホームの各事業所で就業中であるが、いずれもが1年未満であるため、2021年度は時間数をフルタイム(専門学校就学中の1名以外)に伸ばしつつ、職務に慣れて正職員化に近づけるよう指導していきたい。なお、1名は今春、専門学校を卒業して特養で正職員として介護職に就く者もいる

 広報はホームページ内で「働く内容」を詳細に紹介し、支援の質にかんする情報公開を進めて行く、マッチングサイトからホームページの当該箇所にリンクを貼ることで、求職者が業務のイメージがついて、応募のミスマッチを防ぎ、法人に必要な人材確保につなげたい。

 それ以外でも、旺盛な活動を適時発信し、部門で開設しているSNSも同時に活用しながら福祉実践の発信や魅力のアピールをおこなっていく。

(4)研修

 従来からの基本研修・専門研修・必須研修は従来通りに加えて、人権や福祉の歴史といった日常支援の根底にあたる「福祉観」を問うような科目を検討している。指導職関連の研修では、業務改善や第7期中期計画作成もからめて、事業の大局的な課題について討論・文章での表現を学ぶ科目を予定している。これとは別に「経営者育成」を兼ねたワークショップや講座を主任・係長対象に検討する。

 また、基礎的な研修は、動画撮影をし、編集の上でスマホやPCなどからの視聴と記録ができる仕組みを3年ほどかけて構築する計画に入る。このことで中途採用職員や短時間勤務の職員、パート職員にも同一内容で随時実施可能になる。

 広報や研修、マニュアル(外国出身人材向けや障がい者雇用向け)作成を目的として「動画の撮影・編集をする特命チーム」を編成する予定である。

(5)危機管理(防災・感染対策)

 2020年度の感染症拡大の事象を受けて、制度改訂時においても厚労省は各法人の「感染対策委員会」の設定などを求めている。

 ライフサポート協会としては、生活施設など中心に、感染症対策の会議はおこなっていたところではあるが、法人として横断的に論議する場として、既存の「防災委員会」以外に「品質管理委員会」も重なる課題を取り扱うので、一定再編したうえで、各種の危機管理に対しての検討する場を継続的に運営していく予定である。

(6)法人本部体制

 法人本部の業務については、総務職員は正職員5名と包括所属の事務員、その他本部パート職員2名、各拠点の事務パート4名で分担している。2019年度に大幅に変わった体制で2年が経過し、業務遂行のスピードも上がったので、2021年度は今まで懸案の課題であった月次決算の提出や、情報保管の仕組み(クラウドの活用)の構築といった課題を進めていく。固定資産や車両の管理も不十分なため、整理をするか業務委託にするなども視野に管理の確実性を上げ、合理化も進めたい。また、施設管理や危機管理などで今後アウトカム評価や科学的根拠に基づいた介護の現場との連携も、クラウドシステムの活用拡大を通じて強化することも課題である。

(7)設備・備品関係の管理

 老朽化した施設の改修・備品の置換・車両の買換えなどは別紙「2021年度予算のポイント」に詳細を記載している。総センが築35年、なごみが築17年、であいも築10年が経過したため、一定予算でも計上はしているが、細かな修繕・買換えも予測され、2020年度に助成金も得て一気に進めたOA化(リモート会議やタブレットの普及、WiFi工事など)は2021年度も継続していく予定である。

(8)2021年度予算案の概要

【収入】

 介護保険収入は5億7,150万円で、前年度から440万円の減になる。

 障がい福祉サービス収入は7億7,885万円で、前年度から6,150万円の増で計上している。
 報酬改定による影響では、放課後デイで大幅なマイナス改訂になった。生活介護では障がい支援区分の軽い方のマイナスが大きいが、重い障がいのある方にはプラスになっているため、事業所による影響はバラつきがある。

 稼働率の点では、高齢部門の在宅系が近隣に入所施設開設による影響を受ける予測があり、大きく減じる予算を組んでいる。他方で定員に余裕がある大領COCOROと泉北のはぴな(いずれも生活介護)は新規利用者受入による増収を見込む。

 収入合計は14億372万円で、前年度予算比5,643万円増(104.2%)となる

【支出】

 人件費支出は10億717万で前年度比3,164万円増(103.2%)障がいグループホームと、泉北のはぴなで合計4名の正職員増と高齢部門の欠員補充などによるものである。

 事業費支出は1億840万円で前年度比220万円増(102%)

 事務費支出は1億6,368万円で前年度比240万円増(101.5%)

 2020年度は感染対策経費に多くが投入され、行事等の活動経費が抑制されたが、一定の範囲でもとの計上に戻ることを予測して計上している

 これらの結果で、事業活動資金収支差額は8,528万円の黒字(利益率6.1%)となる。

 施設整備収支では、支出に老朽化した設備系が盛り込まれているため、2000万円の借入を予定している。その他、備品や固定資産などでのリース払いも増加しており、4,909万円のマイナスになる。

 その他の活動収支については退職金積立2,155万円のマイナスになる

 以上のことから、当期資金収支差額は1,464万円となる予算である。