更新日:2022年4月20日
2021年度も昨年に引き続き、コロナ禍に見舞われた不安定な1年であった。コロナ感染による事業の停止や利用者の利用控え、それらの影響による新設したグループホーム(以下、GH)の入居の遅れなどがみられ、法人の事業収入は前半期かなり低迷した。スタッフの工夫などにより後半は持ち直したものの、感染拡大の波にも見舞われ大変厳しい状況であった。
2021年度の報酬改定では、2018年改訂に続き一部事業での引き下げがあり、厳しい状況が続いている。またグループホーム(以下、GH)の夜勤加算の条件強化にも見られるように、厚生労働省の福祉従事者への配慮のなさと尊敬のなさが浮き彫りになった改定であったと言っても過言ではない。
その大きな背景として、2000年以降の福祉事業の規制緩和と民営化促進があり、結果的に行政の意識も住民や福祉現場の声を把握しなくなり、福祉が数字でしか質を判断されなくなっている。以来20年以上経過する中で、利用者ニーズ、権利保障を優先する福祉事業所は岐路に立たされている。
また、福祉制度も生活のしづらさや困窮を、原則として自己責任とする論に依拠することで、制度は最低保障に縮減してきた。そのことが行政職員の意識の低さと、当事者が声をあげにくくなることにつながっているのではないか。あらためて、包括的・継続的な福祉制度の充実こそが人権社会を実現する第一歩となる。このような声を上げていくことも、社会福祉法人の大きな役割になってくる。
このコロナ禍では、生活支援の在り方について見直す良い機会になっている。事業所も利用者も互いが厳しい状況の中、しっかりと利用者の声に耳を傾けてきたか?事業所の都合ばかりを押し付けるようなことがなかったか?当法人においては、クラスター発生時期以外は休所を選択することなく、できる限り普段通りの実践を心掛けてくれた職員の工夫と努力には感謝しかない。
我々の使命は権利擁護であり、意思決定支援である。こうした点に依拠した上で「介護や支援の質」の向上に対して貪欲な姿勢が福祉事業所には求められ、その質をもって2024年度の報酬改定に反映させる必要がある。単なる加算の積み上げではなく、福祉事業の基本報酬をしっかりと担保し、行政には質の向上に向けた監督指導を求めたい。同時に私たちもその実践と具現化が一層求められると認識している。
今年度においても、このコロナ禍で明らかになった福祉従事者のエッセンシャルワーカーとしての役割を、防災に関するBCPの作成を大阪府のモデル事業として進め、これまでのコロナ禍の総括として、我々社会福祉事業者の実践の中でその必要性を社会に示す足がかりとなった一年であったといえる。
各事業においては、2016年に低下した稼働率を2017年から2018年にかけて元に戻してきた。2018年度は利用者数の定員と稼働率の整理による現状把握を行った。2019年度にそれを基に定員に余裕のある事業部へ新たな利用者獲得を働きかけ、稼働率の向上及び、その安定のための事業計画と人材配置の適正化に努めてきた。その結果、2019、2020年度は、若干ではあるが予算を上回る事業収入を得ることができた。2021年度は、収入において様々な不安定要素があり、大きな痛みも伴った一年であった。
2022年度においても、稼働率の管理による収入の確保と併せて人件費の管理への意識も強化していきたい。その上で、高齢、障害各部署が連携して取り組める事業を考えていきたい。適材適所への人材配置、役割の明確化、仕事の共有を持って支援の質を上げていきたい。人件費率を下げながらも一人当たりの収入を上げることにより、スタッフのモチベーションの維持にも努めていきたい。
泉北に関して「みんなのマーケットるぴなす」も地域住民から認知され順調にスーパーとしての売り上げも伸び、就労支援利用者も定着してきている。しかしながら、「るぴなす」に関しては、堺市側の一貫性を欠いた施策(買い物難民対策も含めて福祉事業を誘致した経緯があるにも関わらず、現在は再開発で近隣に別の商業施設を誘致している)により、やむなく移転の検討を進めている。他方で、市内の観光農園との連携によるジュース作成なども進んでおり、市民や利用者とのつながりもあって実践面では深化してきている。一時期は稼働の低下があった「じらふ泉北」も回復基調にあり、移転開所後は順調に利用が安定している「はぴな」ともども安定運営の礎ができてきている。今後3事業所ともに、より良い利用者支援に繋がるプログラム作りが期待される。
また、締め付けが厳しくなっている障がい児通所部門では、昔ながらのじらふの良さは壊さず、時代にあった放課後等デイサービスの形を模索したい。これまでの実践及び地域連携の中心的活動が評価され2022年度より大阪市より障がい児療育の委託を受けることになった。これまで以上に子どもから大人への繋がりを大切に利用者に信頼される療育、生活の支援のスキルを上げていきたい。
また、じらふ泉北においては、職員数を安定させることで、児童発達支援及び低学年層の利用の促進を視野に入れ立て直していきたいと考える。これまで培ってきた実践とスタッフのスキルを最大限生かしながら、利用者に選ばれる事業内容を模索したい。
2021年度にはGH10部屋を開設したが、GHのニーズは潜在的にはまだまだある。様々な入居の在り方を想定しながら、住居の課題については、今後も新しいGHの開設に向けて高齢、障害を問わず検討をする。またGH以外にもより幅広い人が利用できるサービス付き住宅の確保についても検討を始めていきたいと考える。
ヘルパーに関しても将来的にGHの支援、サービス付き住宅への支援も視野に入れた強化が必要であると考え、生活支援ニーズに対する適切な対応を進めていきたい。また若いスタッフの生活支援力、生活力を強化するためにも今ある生活の場から積極的に仕事の共有を行い、スタッフのスキルアップの場としても活用していきたいと考える。
小規模多機能型居宅介護及び特別養護老人ホームでは、コロナ禍においても感染対策を丁寧に行い、職場内での濃厚接触者を最小限に減らし、大きな稼働率の変動がなかったことはスタッフの努力の賜物でしかない。来年度以降も高齢者事業特有の現象への対応ができる準備を常に考え、稼働率の安定に努めていきたい。
特別養護老人ホームや認知症GHにおいても、先述した障がい者の住居課題を合わせて、現状に応じた事業変更も視野に入れ検討委員会を立ち上げていきたいと考える。特に認知症GHのスペースの有効活用をテーマにあげ開所した認知症デイサービスの安定化のみならず、ニーズに対応し且つ事業安定が見込める活用を考えていきたい
コロたま倶楽部について、現行の地域活動支援センターから生活介護・就労支援等事業への移行と同時に地域課題に応じた有効活用を考えていきたい。精神障がいのある方の通所の場としては、利用者が安心できる場所、興味を持てるプログラムの構築が、利用者の安定利用に繋がる。また「地域活動支援センター」の制度も維持しつつ、制度のはざまにある方(長期引きこもりの方・安定通所は難しい方など)にとっての居場所であったり、地域との連携が図れる場として運用し地域課題に応じた再編を検討する。
最後に、包括支援センターやふうがなど法人の相談機関が中心となって作って来たネットワークによる専門職の連携、また、継続的な交流の場の運営による住民支援にも引き続き力を入れていく。法人研修だけでなく、地域住民の方々の参加できる研修や活動を続けることで、個と地域の一体的支援を実現していく。このような活動に法人全体で関われるようスタッフにも周知すると共に、ニーズをくみ上げ、誰もが住みやすい街づくりをスタッフ共々意識できる1年としたい。
役員は昨年度改選された人員で引き続き運営にあたる。理事会は4回開催で予定する。評議員会は年2回(3月・6月)の開催になる。
運営にかかる実務上の決定は経営会議(理事長・常務理事2名・施設長クラスの部長・課長4名の計7名)を週1回、年47回の開催で推進する。主には収支の状況・職員数や時間外労働時数などの定点確認と対策・理事会決定事項の具体的推進課題の論議・正職員採用と配置・施設運営上の重要決定などを審議する。
2022年度の重点課題としては
その他の管理については各種委員会を定期開催して執行していく。
また、2021年度(4〜1月の平均値)の有休休暇取得と時間外業務の状況、および2022年度の数値目標については次表の通りになる。
有給取得は目標を超過達成の見込みであるが、2022年度は公休日を年間5日増加(年110日)となるので、有給取得についての目標値は再度2021年度水準で掲げる。
時間外業務時数については目標達成に満たない可能性が高いため、2021年度目標を継続で取り組む。
時間外業務については部門間の状況の違いが大きいため、時間外業務の多くなっている高齢系居住系(地域密着型)への対応が大きな課題になる。特に他部門職員の応援や夜勤専任に近い雇用形態の採用(週休3日制)も行いながら時間外業務の抑制につとめたい(高齢系が赤系統・障がい系が青系統で濃色が平均以上)
広報誌「ライフサポートだより」の編集を担当者持ち回りに変わり、記事内容の募集とあいまって意識的な参画ができる体制は整った。他方で行事報告に傾斜した誌面やホームページ報告についても、利用者や職員をピックアップした記事(永年勤続者や永年利用者などのエピソード)やデータの公開(アンケートや就労支援事業売り上げや工賃など)について幅広く取り上げていく。また、いくつかの部門でSNSを開設しているが発信力の強化、発信頻度の促進などに取り組みたい。
従来からの基本研修・専門研修・必須研修・四恩学園等との合同研修・危機管理などの委員会主催研修・職掌別の研修(主任研修)は継続的に実施する。全国水平社創立100年に合わせた今日の人権課題にかかわる知見を学ぶ機会をもうけることや、広報(発信力強化)やOA理解(パソコン設定扱いなどの周知)についても実施する予定である。
継続しての状況付与を伴った防災訓練の定期実施に加え、前年度より取り組んでいる「BCP(事業継続計画)作成」の取り組みも、前年度の特養なごみ版をさらに検討するとともに、在宅系や障がい部門、法人本部、地域団体などとも連結したプランに進めていくことでより実際的なものに作り上げていくことが課題になっている。
感染拡大に翻弄されてきた2年であったが、2022年度も引き続き職員研修や感染対応を随時進めていく。また、防護服の着脱や非常時電源の取り扱い方などについて、職員間でのバラつきをなくすための研修や部門内での共有を進めていく。
各施設の経年劣化による大規模改修を実施する。
以上の工事実施にあたり、金融機関からの融資申し込みをおこない、確定し次第、順次施工(導入)する。この中でなごみの外壁補修工事は競争入札をおこなう。
介護保険収入は6億118万円(別紙2022年度予算案の右端:注の①になります。以下同様)で、前年度(予算)から2,918万円の増額になる。理由は決算見込みで算出された実績(地域包括支援センターも補助額が増加になったため予算を上回っている)に、小規模多機能型居宅介護の稼働が伸びる見込みを加味した点と、障がい福祉含めての処遇改善加算の新制度分の上乗せ(介護保険で600万円)を足しこんでいる。また、特養の日常生活費の一部(衛生関連消耗品など)を入居者さんに負担をお願いすることで収入増(約200万円)を図る。
障がい福祉サービス収入は8億450万円(予算案②)で、前年度(予算)から1,596万円の増額で計上している。GH(大領であい)の定員増(7名→10名)短期入所は定員減になるが、現在は独立していることによる宿直者の随時の確保が困難という理由で希望に応えきれず稼働も低迷している(他方で、そのおかげで「コロナ感染対応用の部屋」としては活用できてきたが)ため、むしろ、常時職員配置があることによる利用希望に応えることのできる体制になったともいえる(下図左が現在、右が2022年度)
その他では、大阪市発達障がい児療育相談事業の受託による補助や、前述の処遇改善加算の改訂(障がい福祉で830万円)による増収を見込んでいる。
泉北拠点では3事業とも微増ではあるが、9170万円と前年予算から550万円の増額で計上している。利用者の増によるものと加算によるものである。
収入合計は14億5,266万円(③)で、前年度予算比4,554万円増(103.2%)となる
人件費支出は10億3,831万(④)で前年度比3,355万円増(103.3%)障がいグループホーム定員増による夜間勤務職員の1名増や社会保険料対象範囲の拡大(週30時間労働→週20時間以上への引き下げ)による法定福利費の増額(⑤)などが主な要因になる。
数年来、高齢事業部介護職員の欠員に悩まされてきたが、海外からの留学生や技能実習生の受け入れ雇用により2021年度はほぼ通年に渡り充足され、むしろ若干の過員状態になった。ただ、次ページの表のように留学生などのパート雇用増によるものであり、一時的な教育機関も含めた過員としてとらえており、卒業後随時正職員化するにあたっては解消していくことになる。
ただ、各部門からの要望に沿って配置した職員数が満たすと、人件費が高騰していくため、生活介護系・就労支援系・地位密着型などの複数部門での調整(欠員が生じても、すぐの募集にせず、関連部門での応援体制を組む)を担当係長通じて徹底することで過員についても一定は抑制する形にしたい。
事業費支出は1億1,729万円(⑥)で前年度とほぼ同水準(100.5%)ただし、近年の燃料費や光熱費などの高騰を織り込んでいないため、この点は懸念される。また、感染拡大で2か年に渡って高い水準で支出を押し上げた消耗品器具備品費も300万円ほど圧縮(⑦)している。
事務費支出は1億7,555万円(⑧)で前年度とほぼ同水準(101.5%)。決算見込みとほぼ同額になる。じらふ長居(大阪市発達障がい児療育相談等)の物件が増加しているため賃借料(⑨)や施設管理関連の費用が増額になっているが、職員の充足などによる広告料やWiFiなどの設定が一定完了したことによる経費減を見込んでいる。
これらの結果で、事業活動資金収支差額は8,080万円の黒字(⑩)(利益率5.6%)
となる。
施設整備収支では、(6)の改修工事の借り入れや執行にかかる経費を盛り込めていないので、当日その分を追記して差し替え致します。
その他、既存の借り入れ返済や退職金積み立てなどを計上し、当期資金収支差額
は1,220万円(⑪)となる予算である。