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特養なごみ施設長交代に寄せて

2014年4月

 桜の季節も過ぎましたが、通勤時、春の香りをいっぱいに感じています。

人材不足の内実は?

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 2014年度にむけて新人職員を迎えることができましたが、他方で離職者も出してしまいました。

 もちろん、本当にやむをえない事情で辞められるケースも多いのですが、特に看護師の離職に際しては、数ヶ月間募集しても1件の応募もない状態が続きました。幸い年度末ぎりぎりに確保のめどがついたのですが、医療ケアを要する入居者さんも多い中、医療機関でも同様と聞きますが、福祉施設でも人員確保は危機的状況と思わざるを得ないです。

 もちろん、介護職員も同様に確保が困難です。

 介護福祉士・社会福祉士国家資格取得者のうち福祉での職に就く人は半数といわれています。ある学校では、「福祉学科であっても一般企業に、多くの学生が就職を希望した。特に景気が上向きになることによって企業も人材を確保するために様々な工夫をしている。」とのこと。例えば、インターシップ制度により就職につなげる企業、中には、初任給を高く設定して緩やかに昇給するなど見た目で呼びよせる企業もある様子です。

 厚労省は、「少子高齢化の進行等により、労働力人口が減少し、全産業的に労働力の確保が困難となっていくことが見込まれる中で、限られた労働力の中から、国民のニーズに的確に対応できる質の高い福祉・介護人材を安定的に確保していくことは喫緊の課題であり、国民生活を支える福祉・介護制度を維持する上で、不可欠の要素であると言えます。」と示し、自治体でも様々な取り組みを展開しています。しかし、実際、近隣の福祉施設においても常態的に求人募集している現状です。見込まれるといった近い将来の少子高齢化の話ではないのです。

 職員不足といっても多少傾向があって、地域密着型の小規模多機能では、派遣での業務希望者から、「同じ働くなら、特養等枠組みが決まっている施設のほうがよい。あれもこれも柔軟にしないといけない小規模多機能は避けたい」と断わられた例もありました。利用する側からすれば柔軟な対応ができることが地域密着型のよい面なのに、働く側からすれば柔軟な対応を求められることを厭うというミスマッチ感が際立っています。

 福祉・介護の現場の給料が必ずしも飛びぬけて安いわけでもなく、際立って厳しい労働条件でもないと思っていますが、同じ福祉業界でも介護職の応募にはほとんど無反応なのが、相談職特に包括支援センターの募集時にはきちんと反応があるのです。

 そのことをどう見ればよいのか?

 これまでのライフサポート協会では、新人の職員が中心で、管理職とて私もそうですが他の法人ならば中堅職員程度のキャリアのものが担うといった「層の薄い」中でも、目の前の方々と共に「何とかせねば」の思いで、事業を確立してきました。

 「何とかせねば」の時は、職員と利用者の枠ではなく、皆ではぐくむプロセスの中で、人と人との関係がおりなす力を実感することで、おもしろさを共有でき、疲弊せずに、現在にいたったと思っています。

 決して重度の方がおられなかったわけではなく、重度の方のほんの少しの表情の変化を、ご利用者と共に喜べる関係性がありました。

 ご利用者も自分たちがつくった事業やと思っておられるので、「死ぬまでいきるで」「最期のときまで、ここのみんなと過ごすから、その時は頼むで」「私がここにおらんかったら、どうしてたんやろ・・・若い子に教えられるのはやっぱり長老者や」という方もおられました。

 では、現在といえば、知識・技術面については、学ぶ機会もたくさんあり、ルールや指針も整備され、資格保有者も増えて、制度的に確立された事業というように整った環境になったにもかかわらず、自分たちが考えられる範囲の「業務」に納まってしか対応できなくなり、対利用者さんにおいても閉じこもった関係性になってしまっているのではと思います。

 分業化し専門特化した業務はやりたいという人がまだ多く、職員間や利用者さんとのコミュニケーションを経ながら創りあげる介護業務はなり手がないのは、コミュニケーションスキルが乏しくなったからなのか?家事や育児といった生活経験の乏しさも背景にあるのか?単に報酬が見合わないだけなのか?理由はひとつに決められるものではありませんが。

 問題や業務を流れ作業的に片付けていく施設内完結型といえる中での仕事からは、本当の意味での「支援の楽しみ」を味わえるはずがないのです。

夢を語る

 私たち福祉に携わるものも、単に現状を嘆くのではなく夢を語る必要があります。

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 目の前のお一人お一人に向き合い、エンパワメントの力を高めるために何が必要なのか、そのために既存の制度だけで考えるのではなく開拓をすることが求められます。

 高齢だから夢がないわけではない。こうしたいという思いは、こうしてほしいという思いはいくつになってもなくなるわけがないのです。

 障がいがあるから、認知症になると夢を語れないわけではない。私たちの側が聞こえない声を聴き取れていない。聞き取っていても、耳で聞いているだけで心にとめていないので、実現に向けて動けていないことが、自分たちだけの考えで完結した、夢をあきらめた、ご本人の力をみくびった支援になっていると思ってやみません。

 人と人とがおりなし、夢にむかう場面がなければ、いつまでたっても3Kの現場であろうイメージを払拭できない。

 特に若い世代の方々から魅力ある職業として選択されるようにしていくために、やりがいが見つかる職場としても、お一人お一人の、人生のクライマックスの舞台づくりを、ご本人・ご家族・地域の子ども、地域の方々・若い世代の学生・職員と共に作っていける職場にしていきたいと思っています。

 4月末をもちまして、私福留千佳は特養なごみ施設長を後任の金光建二に交代いたします。ですが、今後も総合施設長として、住み慣れた地域で、また、自分らしい暮らしを人生の最期まで継続できるよう、「する側、される側」「職員と利用者」「在宅サービスと施設サービス」「施設と地域」というような分断ではなく、人が大切にされ支え合う町づくりの「福祉の拠点」として、ますます努力をしてまいります。今後共よろしくお願いいたします。(施設長 福留千佳)

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