認知症ケア学会での報告
なごみ総合施設長 福留千佳
多くの医療福祉事業所がそうであるように、ライフサポート協会内でもこの1年は感染対策の取り組みに費やしてきました。
法人全体(利用者・職員あわせて)で計11名の感染事例が発生し、家族の感染等によって濃厚接触者となった事例も何度か報告されています。幸い5月段階で重症にいたった例や、クラスターと認定された例はありませんが、変異株の拡大もあり、医療機関もひっ迫し、依然として予断を許さない状況が続いています。
このような状況下で、生活の場である「特養なごみ」やグループホームなどでは、検温や出勤時の消毒、こまめなマスクや手袋の交換、定時的な換気、記録の徹底、休日の行動に至るまで書かれた「職員10の心得」を策定し、施設内感染予防に努めてきました。
以下に示しましたように、備蓄の防護服やマスク・手袋・消毒液もそろえてきました。
その上で、職員間でも議論をしました。施設内の「面会」についてです。条件付きで可能としているなごみですが、その議論を受けた取り組みの試行錯誤を認知症ケア学会で報告しました。
一通りの感染症対策としてすべきことはしたのですが、その段階で、こと面会については、単純に「禁止」でいいのかという疑問が職員間であがりました。特養は、病院ではなくあくまでも生活の場です。
入居者さんの平均年齢は90才を超え、要介護5の方が半数を占め、いつ何が起こってもおかしくないのに、感染防止とは言え、一律面会禁止は入居者さんにとっても、ご家族さんにとってもあまりに耐えがたいことではないかという意見です。さらには、ご本人の持つ力を奪う事にもなりかねないこと(ご家族の来所を待つあまり、エレベーターをじっと見つめる方もおられました)タブレット面会についても用意はしたものの、家族も高齢だったり、認知症のためか画面越しのやりとりができないなどもありえました。
経営会議の論議の結果、昨年4月には「特養入口での検温等と面会簿への記入」「個室内での面会」「マスクの着用」「お帰りの際には触った箇所の消毒という条件のもとの面会を可能としました。でも、職員間には別の意見もありました。
そんな中2020年5月、なごみデイサービスで感染者が発生しました。特養の職員の接触もなく導線も別とはいえ、特養の面会についても再度禁止としました。他方で、看取りに入られた方のご家族さんは面会をしていただいたなど、状況に応じて判断をしていました。その間にも論議は続きました。
デイ職員の接触者(検査は陰性ながら濃厚接触者であり、2週間の隔離)の復帰段階で、施設内感染は広がらなかったとみて、再度「条件付き面会」を再開しました。
10月の厚生労働省老健局の事務連絡では、利用者の心身に与えるポジティブな影響や地域の感染状況などを総合的に勘案し、施設側で実施の可否個別に判断するルールへ変更されました。全国老人福祉施設協議会でも「制限」の表現は緩和されました。とはいえ多くの施設が禁止にしていますし、確かに感染状況は予断を許しません。「面会ができる」ことが即、高いリスクとなるわけではないにしても、職員個々の休日を含めた緊張感につながり、ご家族も『第4波』以降は面会件数も減っています。それぞれが入居者さんを思う故に面会もされますし、時には抑制もされています。法人としてはその思いに応えるためにも、引き続き気を緩めずに感染対策を継続していきます。
「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について」(その2)令和2年4月7日付厚生労働省健康局結核感染症課ほか連名事務連絡
<参考資料>
【参考】なごみでの感染症対策保管物品